2023 Fiscal Year Research-status Report
アワビの生理活性ペプチドを指標とした成長、環境適応と性成熟の高感度診断法の開発
Project/Area Number |
22K05786
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
森山 俊介 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (50222352)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エゾアワビ / ヘモリンパ液 / ニューロペプチドY / 生殖腺刺激ホルモン放出ペプチド / インスリン関連ペプチド / 成長 / 雌雄 / 定量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エゾアワビの脳神経節で産生される有用な生理活性ペプチドの免疫測定系を確立し、それらペプチドのヘモリン液中の消長に基づいて、本種の成長、環境適応及び性成熟を高感度かつ正確に評価できる診断法を開発することを目的としている。本年度、サイズの異なるアワビのヘモリンパ液に存在する生理活性ペプチド群の網羅解析を質量分析系により分析した。その結果、食欲調節に関与すると予想されるニューロペプチドY(NPY)、摂食行動に関与すると予想されるセレブリン(Cell)、性成熟に関与すると予想される生殖腺刺激ホルモン放出ペプチド(GnRH)、細胞増殖に関与すると予想されるインスリン関連ペプチド(ILP)および糖代謝に関与すると予想されるアディポキネティックホルモン(AKH)など15種類のペプチドが検出された。得られた結果に基づいて、年齢およびサイズの異なるオスとメスのアワビのヘモリンパ液を1N塩酸/アセトン抽出し、得られた抽出物を高性能液体クロマトグラフィーに付して精製した結果、合成したNPY、Cell、GnRHおよびAKHと溶出位置が一致する目的としたペプチド群が検出された。これらのペプチドはアワビのNPY、Cell、GnRHおよびAKH抗体、また、2種類のILP抗体と免疫陽性反応を示した。ヘモリンパ液の1N塩酸/アセトン抽出物におけるこれらペプチドの含有量は、オスとメス共に、同サイズの2才貝の方が3才貝よりも、また、成長の良い個体の方が多いなど、昨年度と同様な結果が得られた。これらの結果に基づいて、アワビのヘモリンパ液中のNPY、Cell、GnRH、AKHおよびILP濃度を定量するためのエライザー系を確立するための研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、エゾアワビ脳神経節で産生される有用な生理活性ペプチドの免疫測定系を確立し、それらペプチドのヘモリンパ液中の消長に基づいて、本種の成長、環境適応及び性成熟を高感度かつ正確に評価できる診断法を開発することを目的としている。本年度は、昨年度の研究成果に基づいて、新たに調製したアワビのヘモリンパ液のから質量分析系により、15種類以上の生理活性ペプチド群を検出した。また、本年度、ヘモリンパ液の1N塩酸/アセトン抽出からNPYおよびGnRHの他、Cell、AKHおよびILPを、を高性能液体クロマトグラフィーおよびドットブロット法により、検出あるいは簡易定量する手法を確立した。確立した検出・定量法により、年齢およびサイズの異なるオスとメスのアワビにおけるヘモリンパ液中のNPY、Cell、GnRHのAKHおよびILPの含有量を比較し、年齢および成長速度の違いによりアワビのヘモリンパ液の抽出液中のNPY、Cell、GnRHのAKHおよびILPの含有量に違いがあることを示唆する結果が得られるまでに至った。このように、アワビの成長、性成熟や代謝などに関与すると予想されるペプチド群の抽出法と検出法が確立され、アワビの成長、環境適応及び性成熟を評価できる診断法を開発することに繋がる一定の成果が得られるまでに至っている。現在、本研究の最終的な目的であるアワビの成長、環境適応及び性成熟を高感度かつ正確に評価できる診断法としてエライザー系の確立に向けた研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度に得られた研究成果に基づいて、ヘモリンパ液の抽出物を調製し、その分画物から脳神経節由来の生理活性ペプチドの高性能液体クロマトグラフィー、合成ペプチドおよび特異抗体を組み合わせた検出法を開発する。さらに、得られた結果に基づいて、免疫測定系を開発する。これらの測定計を用いて、アワビの成長速度、栄養状態や ストレス、また、成熟度の異なるアワビのヘモリンパ液中の生理活性ペプチド群の消長との関連性を調べ、本種の成長や健康状態、また、成熟度を評価できる高感度診断法を開発して養殖現場に応用するための技術開発に資する知見の集積を図る。
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Causes of Carryover |
令和5年度までに得られた研究成果に基づいて、ヘモリンパ液および調製した1N塩酸アセトン抽出物から少なくとも5種類の脳神経節由来の生理活性ペプチドのの高性能液体クロマトグラフィー、合成ペプチドおよび特異抗体を組み合わせた検出法を開発する。さらに、得られた結果に基づいて、エライザー系を開発する。これらの測定計を用いて、アワビの成長速度、栄養状態や ストレス、また、成熟度の異なるアワビのヘモリンパ液中の生理活性ペプチド群の消長との関連性を調べ、本種の成長や健康状態、また、成熟度を評価できる高感度診断法を開発して養殖現場に応用するための技術開発に資する知見の集積を図る。
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