2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05794
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
山本 岳男 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (20524846)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 賢治 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 特任助教 (00757370)
大平 剛 神奈川大学, 理学部, 教授 (10361809)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ズワイガニ / 最終脱皮 / 幼若ホルモン / 脱皮ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の2課題を実施した。 課題1. ズワイガニの最終脱皮に関わるホルモンを特定するため、ファルネセン酸メチル(methyl farnesoate: MF、幼若ホルモン)に着目し、天然海域から採捕した最終脱皮前後の雄で血中濃度を比較した。その結果、MF濃度は最終脱皮後に増加することが分かった。また、MFの生合成・分泌を制御している眼柄神経節の網羅的な遺伝子発現解析から、最終脱皮後個体ではMF分解酵素遺伝子などの発現が抑制されることで血中MF濃度が高くなっていることが示唆された。さらに、甲殻類と近縁の昆虫類において行動様式の変容を促すことが知られている生体アミン関連経路が最終脱皮後のオスで活性化されていた。これらの知見から、MFや生体アミン類は雄の生殖行動を制御していることが示唆された。 課題2. 雄ズワイガニの最終脱皮は鉗脚の肥大化を伴うことから、通常脱皮よりもエネルギー要求量が大きいと推察される。そこで摂餌量が多いほど最終脱皮率が高まると予想し、飼育下で給餌頻度が異なる3試験区(3回/週、1回/週、1回/2週)を設け、最終脱皮率を比較した。供試数は20個体/試験区とし、実験はサンプルの入手時期を変えて2回実施した。採血の頻度は1回目の実験では1回/月としたところ大量死亡が発生したため、実験を中断した。2回目の実験では脱皮時期が近づいた個体のみ採血することとしたところ、大量死亡は発生しなかった。実験の結果、最終脱皮率は当初の想定とは逆に、給餌頻度が最も低い区で最大となった。しかし最終脱皮数はいずれの区でも2~4個体で少なかった。課題1で血中MF濃度は最終脱皮前<最終脱皮後であったが、同一個体の脱皮前後から採取した血液においても同様な結果が得られるかは、現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1ではMFが雄の最終脱皮に関係していることを明らかにしたことに加えて、生体アミン類が雄の生殖行動を制御することも示唆できた。 課題2では最終脱皮率は当初の予想と異なり、給餌頻度が低い区で高くなった。しかし最終脱皮率が全試験区で低かったことから、今後再試験して検証する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1では生体アミン類が最終脱皮に関与しているのかを明らかにする前段階として、ズワイガニ体内から生体アミン類を定量化する手法について検討する。 課題2で最終脱皮率が全体的に低かったが、当該年度は飼育個体を入手した海域においても最終脱皮率が平年より低かった(資源調査担当者私信)。したがって次年度は新たにサンプルを入手し、再度同様の試験を実施して結果を確かめるとともに、飼育個体から引き続き採血し、MFに加えて20-ヒドロキシエクジソン(脱皮ホルモン)の動態も調査する。さらに、最終脱皮前における交尾経験の有無が最終脱皮に与える影響も調査する。
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Causes of Carryover |
次年度に計画にはなかった大規模な市場調査を行うことにしたので、カニの購入費が必要になった。
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