2022 Fiscal Year Research-status Report
生理生態学的アプローチによるウナギ属魚類の春機発動・銀化・回遊開始機構の解明
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22K05799
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
萩原 聖士 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (80704501)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ウナギ / 銀化 / 回遊 / 春機発動 / 性成熟 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウナギ属魚類は黄ウナギとして数年から数十年かけて成長した後、銀化して銀ウナギとなり、産卵回遊を開始する。温帯に分布するニホンウナギなどの温帯ウナギでは、銀化は水温が低下する秋季に生じ、銀化に伴い眼径の増大、胸鰭の伸長、鰾および心臓の発達、消化管の縮小、生殖腺の発達などの変化がみられる。 ウナギ属魚類は熱帯に起源し、銀化時の形態変化 (Hagihara et al. 2012)、成熟状態 (Hagihara et al. 2012, 2020)、気候と回遊の季節性 (Hagihara et al. 2018) が種によって異なることから、回遊機構と環境の関係の種間差と共通点を検証しすることは、ウナギの回遊の本質的理解を深めると期待される。そこで、熱帯から温帯に広く分布するオオウナギの銀化変態に温帯域の季節的環境変化が作用するか検討した。 奄美大島で雄のオオウナギの黄ウナギ24個体(全長461-537 mm)を電気ショッカーを用いて採集し、12個体を温帯域を想定した水温低下実験(実験群、42日間で25℃から15度に低下、日長維持)に供した。水温低下後のオオウナギは対照群(12個体、水温維持、日長維持)に比べて眼径が大きく、胸鰭が長く、生殖腺が大きい傾向にあった。実験群のいずれの指数も天然のオオウナギの銀ウナギ(Hagihara et al. 2022)ほどの発達の進行を示さなかったものの、熱帯から温帯に広く分布するオオウナギにおいても季節的な水温低下が銀化変態に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2月末日付で東京大学を退職し、3月1日付で北海道大学北方生物圏フィールド科学センターに着任した。これに伴い、年度の後半は研究活動へのエフォートを十分に確保することが困難になったため進捗に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り実施する。所属変更に伴い、飼育実験を実施しやすくなった。生理解析の環境を整える必要があるが、新たに分析機器の購入するなどして次年度前半には実験環境が完成する予定であり、本課題の遂行に大きな問題はない。
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Causes of Carryover |
2月末日付で東京大学を退職し、3月1日付で北海道大学北方生物圏フィールド科学センターに着任した。これに伴い、年度の後半は研究活動へのエフォートを十分に確保することが困難になり、一部の調査と実験を延期したため次年度使用額が生じた。 所属変更に伴い生理解析の環境を整える必要があるため、次年度使用額を分析機器の購入など実験環境の立ち上げに使用する。本課題の遂行に大きな問題はない。
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