2023 Fiscal Year Research-status Report
赤色光によるノリ糸状体成熟抑制を利用した新規ノリ種付け制御技術の開発
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22K05801
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
川村 嘉応 佐賀大学, 農学部, 産学連携研究員 (30601603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 幸生 佐賀大学, 総合分析実験センター, 准教授 (00263038)
木村 圭 佐賀大学, 農学部, 准教授 (30612676)
三根 崇幸 佐賀県有明水産振興センター(ノリ研究担当及び資源研究担当), ノリ研究担当, 係長 (50601613) [Withdrawn]
野口 浩介 佐賀県有明水産振興センター(ノリ研究担当及び資源研究担当), ノリ研究担当, 係長 (20562705)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海苔 / 種付制御 / 赤色LED / PVCフィルム / PyKNOX |
Outline of Annual Research Achievements |
1)成熟制御機構に関する実験:スサビノリ糸状体の殻胞子嚢で特に高発現する遺伝子PyKNOXに注目し、ノリ殻胞子嚢成熟過程の詳細な形態観察とPyKNOX発現定量から、赤色光によるノリ殻胞子嚢成熟抑制機構を理解する実験を行った。スサビノリ糸状体を、温度変化による殻胞子嚢の成熟誘導時に、白色LED、赤色LED、白色LED→赤色LEDの3つの光条件で培養を行い、成熟誘導開始から毎日、殻胞子嚢の形態観察およびPyKNOX発現定量解析を行った。 その結果、赤色光下では、成熟段階が進んでいないⅠ型殻胞子嚢が多く成熟速度が遅くなること、そして成熟の進んだⅢ型の殻胞子嚢が少なく殻胞子嚢の成熟が抑制されていることが明らかになった。PyKNOX発現定量解析では、赤色光下での顕著な差異は観察されなかったものの、どの光条件でも殻胞子嚢成熟初期にPyKNOX発現の増加が確認された後に、Ⅲ型の殻胞子嚢が増加することが明らかになった。Ⅱ型からⅢ型殻胞子嚢への移行は、細胞分裂を伴うため、PyKNOXは殻胞子嚢の細胞分裂に関与している可能性が示唆された。 2)実用化に向けた試験:スサビノリのカキ殻糸状体を、白色光下で胞子放出促進する対象区、赤色LED光下で培養後に成熟開始4日後または6日後に白色光下に移して培養する試験区、赤色LED光下のみで培養した試験区を設けて培養した。ビニロン単糸5 cm を各培養容器に入れ,各光源点灯後6 ~ 7 時間後に単糸に付着した殻胞子を計数し、成熟の制御を評価した。その結果、対象区に対して、各試験区において成熟の抑制は観察されなかったが、若干の成熟遅延効果は確認された。白色光下に晒すことでノリ糸状体の成熟抑制が解除されることから、実用化する際には光を厳密に管理する必要があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)成熟制御機構に関する実験:スサビノリ糸状体の殻胞子嚢成熟に関して、これまでに明らかになっていなかったPyKNOX遺伝子の関与を強く示唆する結果を得ることに成功した。また、殻胞子嚢成熟に初期の細胞分裂が大きく関与すること、これがPyKNOX遺伝子発現に影響している可能性が示唆され、スサビノリ糸状体の殻胞子嚢成熟の機構解明に大きな前進が見られた。 2)実用化に向けた試験:実環境に近い条件で、スサビノリのカキ殻糸状体の赤色LED光による成熟制御を試みたが、若干の効果は確認できたもの、現在の種付け環境での制御は容易ではないことが明らかになった。一方で、実用化する際には光を厳密に管理する必要があることが明らかになったことで、新たな種付け制御技術開発に進展が見られた。 本研究において、新規知見を得ることができていることから、おおむね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)PVCフィルム(600nm以下波長カット・フィルム)によるノリの殻胞子放出抑制:PVCフィルムの使用により一定程度の抑制は可能であるため、更なる実験をしたい。 2)自然水温条件下における、赤色LED光によるノリの殻胞子放出抑制:より厳密な光制御のもとで、赤色LED光下での成熟制御を評価したい。 3)カキ殻糸状体における殻胞子嚢成熟機構の解明:R5年度に大きな進展が得られたため、今年度は成熟へのPyKNOXの関与、細胞分裂にさらに注目し、培養実験を中心とした殻胞子嚢成熟機構の解析を展開する計画である。
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Causes of Carryover |
スサビノリ糸状体の殻胞子嚢成熟に関して、RNAseqによるノンターゲット解析を主体に実施する予定であったが、PyKNOX遺伝子にターゲットを絞って実施した結果、非常に良い成果を得ることができた。RNAseqに関する経費をターゲット解析に変更して解析を進めているが、RNAseqに必要な経費よりも少額で済んでいることから、次年度使用額が生じている。 次年度は、PyKNOX遺伝子にターゲットを絞った解析をさらに深める予定であり、この過程で次年度使用額分の経費を使用する予定となっている。
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Research Products
(3 results)