2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of Genome Editing Technology Platform for Rapid Seedling Production of Seaweed
Project/Area Number |
22K05802
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
関 清彦 佐賀大学, 農学部, 講師 (00264151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 洋一郎 佐賀大学, 農学部, 教授 (00243999)
後藤 正利 佐賀大学, 農学部, 教授 (90274521)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スサビノリ / プロトプラスト / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
海苔養殖の主要品種であるスサビノリの、持続的に栽培可能で環境変化に強い新品種の作出を目的に、本研究ではスサビノリプロトプラストを用いたゲノム編集技術の開発をめざしている。本年度はリポフェクション法を用いたノリプロトプラストへのCas9タンパク質の導入を目指した。 Thermo Fisher社のCRISPER-Cas9タンパク質導入に最適化された脂質ナノ粒子トランスフェクション試薬を用いることにより、ノリプロトプラストに高い効率で導入が達成されると期待した。しかし、取り込み効率はとても低いと想定された。プロトプラストは、培養24時間後には粘質物が確認され細胞壁が形成し始めた。このため、導入は、動物細胞より短い時間で終了する必要があることがわかった。プロトプラストの正常な再生に不完全なプロトプラストを用いることがひとつの有効な手段であったが、リポフェクションを用いる場合は導入効率を低下させることになると考えられたため完全なプロトプラストを用いることにした。また、プロトプラストは接着細胞のように脂質ナノ粒子との接触が十分確保できないことが考えられた。 リポフェクション法の導入条件最適化の検討に加え、Cas9タンパク質にかえてCas9遺伝子を導入することも計画した。スサビノリのコドン使用頻度が低いコドンを多く含むタンパク質は、スサビノリ細胞において発現させる際、発現が極めて限定され機能を果たさないことが報告されている。そこでスサビノリのゲノム情報から34タンパク質をコードする遺伝子の15021コドンから使用頻度を求め、薬剤耐性遺伝子およびCas9遺伝子のコドンをスサビノリに最適化するようデザインした。既報のスサビノリにおけるタンパク質の発現ベクターを参考に、Cas9の一過性発現を指標して薬剤耐性遺伝子と連結した発現ベクターを設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年度の重点課題は、「プロトプラストを用いたゲノム編集システムの開発」とし、CRISPER-Cas9タンパク質とgRNAをリポフェクションによりプロトプラストに導入する系の開発であった。リポフェクションについては、Thermo Fisher社のCRISPER-Cas9タンパク質導入に最適化された脂質ナノ粒子トランスフェクション試薬を用いることにより、ノリプロトプラストに高い効率で導入が達成されると期待したが、取り込み効率はとても低いと想定された。プロトプラストは、培養24時間後には粘質物が確認され、細胞壁が形成し始めた。このため、導入は動物細胞より短い時間で終了する必要があることがわかった。また、プロトプラストであるため、接着細胞のように脂質ナノ粒子との接触が十分確保できないことが考えられた。このため、脂質ナノ粒子とプロトプラストの接触確立をあげる条件検討、一過性の薬剤耐性を付加することによる導入プロトプラストの選択性の向上が課題となった。 並行して、Cas9タンパク質にかえてCas9遺伝子を導入することも計画した。スサビノリのコドン使用頻度が低いコドンを多く含むタンパク質は、スサビノリ細胞において発現させる際、発現が極めて限定され機能を果たさないことが報告されている。そこでスサビノリのゲノム情報から34タンパク質をコードする遺伝子の15021コドンから使用頻度を求め、薬剤耐性遺伝子およびCas9遺伝子のコドンをスサビノリに最適化するようデザインした。既報のスサビノリにおけるタンパク質の発現ベクターを参考に、Cas9の一過性発現を目指し薬剤耐性遺伝子と連結した発現ベクターを設計した。2024年度これら人工合成したベクターを用いてゲノム編集の可能性を探ることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトプラストを用いたゲノム編集システムの開発において、CRISPER-Cas9の細胞への導入と機能発現が課題となる。(1)Cas9タンパク質の導入として、リポフェクション法を試みる。プロトプラストと脂質ナノ粒子の接触頻度を上げるため、細胞密度、振とうなどの条件を変更する。また、薬剤(ハイグロマイシン)耐性を利用し、効率よく導入細胞を選抜する。また、リポフェクションとエレクトロポレーションを用いた導入を試みる。(2)Cas9遺伝子での導入として、ベクター法を用いてCas9遺伝子を導入発現させることに挑戦する。使用頻度が低いコドンを多く含むタンパク質は、スサビノリ細胞において発現させる際、発現が極めて限定され機能を果たさないことが報告されていることから、コドンの最適化を実施した発現ベクターを用いる。しかし、スサビノリにおいて、ベクター系は確立されておらず、既報のタンパク質発現に用いられたベクターを改変して挑戦する。将来的には、一過性の発現ベクターを用いることを期待したいが、本研究においては、Cas9を機能させ、ゲノム編集が可能であることを目標とした。
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Causes of Carryover |
理由:長鎖の人工遺伝子合成、各種遺伝子に対応したgRNAの合成が2024年度に振替られたため、次年度使用額が生じた。スサビノリのゲノム編集のネックになっているのが、機能するCRISPER-Cas9を殻内に導入することである。第1選択としてCas9タンパク質をgRNAとともに細胞内へ導入することが考えられた。スサビノリの細胞壁を分解したプロトプラストを用いることで、脂質ナノ粒子トランスフェクション試薬により高効率に導入できると当初考えていたが、導入効率は低いと見積もられたため計画を変更した。 使用計画:2024年度は、リポフェクション法の導入条件最適化を検討するとともに、薬剤(ハイグロマイシン)耐性遺伝子を導入し、Cas9タンパク質を細胞に効率よく導入、選択できるように挑戦する。紅麹菌プロトプラストでのゲノム編集を参考に、一過性の薬剤耐性ベクターとCas9遺伝子を連結した発現ベクターを用いたゲノム編集に挑戦する。ただし、スサビノリにはベクター系が構築されておらず、またCas9遺伝子が機能するか不明である。導入効率は上がるが機能発現するかは挑戦である。
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