2022 Fiscal Year Research-status Report
海藻類における光合成クロロフィル遅延蛍光測定系の構築と養殖技術への応用
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22K05805
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
寺田 竜太 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (70336329)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海藻 / 生理生態 / 光合成 / クロロフィル蛍光 / 遅延蛍光 / 生長率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,植物が光合成する際に発生するクロロフィル遅延蛍光(Delayed Fluorescence, DF)の測定技術を海藻類に初めて用い,温度や光,貧栄養などの環境勾配下での遅延蛍光のストレス応答推定システムを構築すると共に,蛍光に基づいて生長率を推定する新技術を確立することを目的とする。藻類の遅延蛍光(DF)が測定できる浜松ホトニクス製の機器を特注し,海藻類を中心とした藻類の至適条件やストレス条件下での遅延蛍光を測定する。温度や光等,同じ条件下において,知見の集積しているパルス変調クロロフィル蛍光(PAM)でも測定を行い,値の変化について評価を行う。遅延蛍光の発光総量は試料の生物量(葉緑体量)と相関するため,細胞数や重量による生長率と同様にバイオアッセイにおける生物量の代理値として利用可能であるとされている。サンプルを培養する過程においても遅延蛍光を測定し,値の変化から生長率を推定する方法を確立する。 2022年度は,緑藻ボニアオノリや褐藻マコンブ,ヤレオオギ,ハイオオギ,紅藻Kappaphyus alvareziiを用い,温度や光,環境ストレスの応答を既存のPAMと比較する形で研究を行った。その結果,いずれの種においても,温度や光の応答において,遅延蛍光はPAMクロロフィル蛍光と同じような応答を示し,ストレス応答の指標として有効であることが示唆された。特に,組織全体の細胞が分裂するボニンアオノリでは,生長にともなう過程で遅延蛍光値が増加し,相対生長率を算出することに成功した。一方,頂端分裂組織を除いた組織を用いたヤレオオギやハイオオギ,マコンブでは,培養器官前後の遅延蛍光値が変化せず,重量と遅延蛍光の両方において相対生長率も0だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来は,先行して購入した遅延蛍光器と本予算で購入する機器(同じ機器)を2台同時に用いて実験する予定だったが,2022年度夏に発注(特注品)した機器が半導体部品の世界的な不足の影響で年度内に完成せず,1台での実験系に変更して研究を継続した。実験システムを臨機応変に変更したことから,予定していた結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は制作中の機器が納品され次第,当初予定していた2台を同時に用いてストレス応答のリアルタイムモニタリングをおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
半導体部品不足の世界的な影響を受け,2022年8月に特注で発注した遅延蛍光機器がメーカーの都合で年度内に完成できなかったことから,次年度使用額が生じた。完成次第納品の予定であり,2023年度の使用を予定している。
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