2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a portable fishway system suitable for the upstream migration of salmon and trout
Project/Area Number |
22K05812
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
高橋 直己 香川高等専門学校, 建設環境工学科, 准教授 (70706580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 和義 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (70431343)
園田 武 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (70424679)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環境保全 / 河川生態系 / 遡上阻害 / 魚道 / カラフトマス / サケ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,サケ(Oncorhynchus keta)やカラフトマス(Oncorhynchus gorbuscha)の移動特性と魚道内の水理特性を複合的に検討し,産卵遡上に有効で,必要に応じて速やかに現場に適用できる可搬魚道構造を明らかにすることである.2022年度の研究では,開発した魚道システムを現場に適用し,現地実験と室内実験にて,システムを構成する魚道ユニット内および遡上入口における魚類の挙動と水深・流速分布を明らかにした. 本研究で開発した可搬魚道システムは,人力で運搬可能な魚道ユニットを連結することで魚道を形成する.この仕組みにより,洪水などで魚道が破損した場合でも,問題が生じたユニットを取り替え,速やかに機能を回復できる.2022年度の現地実験では,3つの魚道ユニットを連結し,約1 mの落差部に対して,30分程度でサケ・マス類が利用可能な魚道の流れを創出できた.また,魚道撤去に要した時間は15分程度であり,現場において提案魚道の着脱を短時間で行えることが確認された.現地実験にて,サケとカラフトマスが可搬魚道内で問題なく遡上・休憩できていることが確認された.室内実験では,分析対象とした第2ユニットにて,下流側ユニットに向かう流速の大きな流れと低流速域の存在が確認でき,進入した魚類にとって遡上と休憩の両方を行いやすい流況が創出されていると考えられた.遡上入口周辺を対象として流速特性を分析した結果,流速および流向の観点から傾斜側壁の設置がサケ・マス類の遡上入口への誘導に寄与することが示唆された.本研究にて魚道ユニット内および遡上入口におけるサケ・マス類の挙動や水深・流速特性が解明されたことから,これらの結果に基づく魚道構造の改良が期待される.今後の研究では,魚道構造の改良に加え,環境DNA分析などの手法を用いて,現場における可搬魚道システムの導入効果を検証する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究にて,目標としていた魚道の設計・試作,魚道内水深・流速特性の解明,現地実験における対象種の遡上・降下および魚道内での挙動の確認を概ね達成することができた.一方で,現場における魚道システム導入の効果検証のための調査については,2022年度は目視およびビデオ撮影による観察を行い,環境DNA分析は2023年度以降に実施することになった.環境DNA分析における,採水地点や採水時期に関する検討は完了している.2023年度のサケ・カラフトマスの遡上期にて,魚道システム導入前後の時期に,研究対象の遡上阻害地点上下流部における採水と分析を実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降は,室内実験と現地調査・実験を並行して実施することで,魚道構造の改良と魚道システム導入の効果検証に関する研究を進める.2022年度の研究にて,提案魚道内を対象種が移動した際の水深・流速分布が明らかになった.また,遡上入口周辺を対象として流速特性を分析した結果,流速および流向の観点から傾斜側壁の設置がサケ・マス類の遡上入口への誘導に寄与することが示唆された.一方で,魚道上流端における水深・流速特性については,2022年度の研究では十分に検討されていない.同様に,魚道内流量が増加した場合や,減少した場合に,魚道内部および上下流端の水深・流速特性がどのように変化するのかについても検討されていない.2023年度以降は,これらの点に着目した実験的検討を進め,提案魚道の水理特性をより詳細に解明し,魚道構造を改良する.現地調査・実験においては,これまでに実施した目視とビデオ撮影による魚道内および魚道周辺における対象種の挙動の観察を継続する.加えて,対象種の遡上期にて,魚道システム導入前後の時期に研究対象の遡上阻害地点上下流部における採水と環境DNA分析を実施し,魚道システムの導入効果を検証する.
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Causes of Carryover |
現場における魚道システム導入の効果検証のための調査について,2022年度は目視およびビデオ撮影による観察を行い,環境DNA分析は2023年度以降に実施することになった.これに伴い,2022年度に支出予定であった環境DNA分析関連の予算は,2023年度に支出することになった.この点を考慮した現場における採水地点や採水時期に関する検討は完了しており,2023年度に,2022年度分を合わせた形で環境DNA分析関連の予算を支出する.
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