2023 Fiscal Year Research-status Report
トラフグ口白症新規遺伝子産物を活用した感染機序の解明とワクチンの開発
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22K05819
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
一色 正 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30378319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末武 弘章 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (00334326)
瀧澤 文雄 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60822913)
仲山 慶 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (80380286)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 口白症 / ウイルス / トラフグ / KAR / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
口白症感染魚に特異的に発現する3つのRNA断片(Kuchijirosho-Associated RNA:KAR)について,1)抗KARタンパク質抗体の作製, 2)KAR遺伝子およびKARタンパク質の検出による口白症ウイルスの感染機序の解析,および3)KARを利用したDNAワクチンの開発に関する研究を行った。具体的には以下のとおりである。 1)KAR- A,-B ,-Cのうち,病魚脳において最も顕著に発現するKAR- Bに対するマウスポリクローナル抗体を作製した。 2)1)で準備したマウスポリクローナル抗体およびKAR-Bプローブを用いて口白症魚脳に対する免疫組織化学(IHC)およびin situハイブリダイゼーション(ISH)を行い,組換えKAR-B(rKAR-B)およびKAR-Bの脳組織における局在をそれぞれ検討した。IHCの結果,特異的な陽性反応は確認されなかった。ISHの結果,病魚の脳全体に分布したシグナルが確認された。シグナルは神経細胞,グリア様細胞およびプルキンエ細胞の核と細胞質で発現していた。シグナルの強度は症状の顕性化および重篤化に伴ってしだいに増強し,特に中脳および延髄において顕著な反応を示した。その後,症状が重篤化した瀕死魚においては,脳全体においてシグナル強度が高くなった。 3)昨年度の結果に基づき,KAR-Aプラスミドを接種原に絞り,実験区(KAR-A区)ならびに対照区(空プラスミド区およびPBS区)を設けた試験を行い,DNAワクチンとしての効果を検証した。その結果,攻撃試験では,いずれの区の個体においても口白症の特徴的症状が再現された。さらに,口白症による累積死亡率は各区間で有意差はなかった。したがって,KAR-Aプラスミドを接種されたトラフグにおいて,少なくとも口白症に対する防御効果は誘導されなかったものと判断される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画項目のうち,3)口白症ウイルスのゲノム配列の決定以外の項目:1)抗KARタンパク質抗体の作製,2) KAR遺伝子およびKARタンパク質の検出による口白症ウイルスの感染機序の解析,および4)KARタンパク質のワクチン抗原としての可能性に関しては,計画していた研究の8割程度が終了したことから,ほぼ当初計画どおりに実験を遂行できていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)~4)の研究を総合的に推進する。1)抗KARタンパク質抗体の作製:合成したKARのリコンビナントタンパク質に対するポリクローナル抗体の反応性を検証する。 2) KAR遺伝子およびKARタンパク質の検出による口白症ウイルスの感染機序の解析:KAR-A, もしくは-C遺伝子に対するRNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションを行い,KARの組織内分布の変化を経時的に追跡し,感染経路を解析する。さらに,抗体を用いた免疫組織染色法を併用し,KARタンパク質の発現・局在を確認する。 3)口白症ウイルスのゲノム配列の決定:様々な方法を用いて効率的に精製ウイルスを採取し,口白症ウイルスの全ゲノム配列を明らかにする。 4)KARタンパク質のワクチン抗原としての可能性:KARのリコンビナントタンパク質がワクチン抗原となりうるかを検討する。 さらに,1)~4)の研究について,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
計画していた研究打合せおよび一部の分析が年度内に行えなかった。令和6年度に行う研究打合せおよび分析に要する経費(旅費および消耗品)として使用する。
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Research Products
(1 results)