2022 Fiscal Year Research-status Report
地球温暖化に伴う食料国際需要変化に関するシミュレーション基盤の構築
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22K05858
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
森岡 涼子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業情報研究センター, 上級研究員 (90415323)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 温暖化 / 国際貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、温暖化シナリオに基づく気象データと複数の農作物生産量との関係のモデル化に取り組んだ。国単位の国際貿易データにおける農作物品目輸出量は、育種や栽培の研究分野で使われる各圃場向けの生育・収量モデルから算出することはスケールのギャップのため困難で、低解像度のデータを作成・活用して収量統計と矛盾しないモデルを構築して算出する必要がある。そこで、温暖化シナリオの気象データから各農作物の生産地の地理情報を反映し低解像度化したデータを作成し、単位面積当たり生産量を予測する手法を開発した。開発手法では、時期別・気象要素別に生産量への影響を算出可能であるため、温暖化によって変動する気象要素と変動時期のうち、各農作物にとって注目すべき部分を抽出することができる。その結果、生産者が毎年の気象条件に応じて栽培スケジュールを修正したり栽培管理法を変更したりするための決断をサポートするための基礎技術として今後活用が期待される。また、農作物別・産地別の生産量に関するデータは機械学習の学習データとして十分な量が電子的に蓄積していないことが多い。少数の学習データから、気象影響を複合的にうける生産量を推定することは難しく、特に近年は気候変動の影響でこれまで使われてきた生産量予測法の予測精度が低くなりがちであることが問題となっている。本手法の適用においては、研究開発段階では予測精度検証のためにデータが多いことが理想的ではあるが、予測自体は数年のデータ蓄積で機能する。適用の結果、複数の農作物に対し平均予測誤差が従来法を上回る精度を実現した。本手法は、農作物国際貿易データの推計において、国単位の食品の国際貿易データと国内の各農作物の産地における生産量データとの間をつなぐ重要なパーツである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温暖化シナリオデータの更新、将来推計に必須で本研究では直接予測対象としていない2020年からのパンデミック以降の統計データの収集、および国単位の農作物国際貿易データと国内各産地生産量をつなぐためのモデリング・気象データ作成の自動化と複数の産地・作物での検証を行い、2023年度以降に取り組む気象以外の温暖化シナリオ変数を入れた解析の基盤を作ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、新たにリリースされる統計値の収集のほかに、農作物およびその加工品の国際貿易データと農作物以外も含む国際貿易データの紐づけを行う。また、2022年度に開発した温暖化シナリオ別の農作物生産量予測の結果に基づき、国際貿易データにおいて温暖化による農作物輸出量が変動したときの各国の貿易量の変化をシミュレーションする。
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Causes of Carryover |
次年度の計算環境維持のための予定支出額が交付額を上回る見込みのため、繰り越して対応する。
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