2022 Fiscal Year Research-status Report
農業法人の従業員におけるキャリアデザインとその変化に応じた能力育成の方向性の解明
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22K05862
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
河野 洋一 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (80708404)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | キャリア形成 / 人材育成 / 従業員能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,雇用型農業経営における雇用就農者を中心とした組織構成員のライフプランの志向性をキャリアの志向性と位置づけ,人材育成施策によるキャリアの志向性の変化と,多様な従業員に対する人材育成施策のあり方明確にすることを目的に研究を遂行した。研究課題として,①経時的観察による雇用型農業経営における組織構成員の変化の把握,②事例経営における雇用就農者に対する人材育成施策の把握,③人材育成施策によるキャリアの志向性の変化の把握,の3点を設定し,以下の調査・研究結果を得た。 実際の調査は,北海道S町の酪農経営を展開する農業法人であるA法人を事例に実施した。調査方法として,A法人の経営者・役員3名,従業員14名,パート2名,研修生6名(いずれも2018年時)に対して,定期的なヒアリング調査を実施し,各組織構成員の組織内での立場や就業環境の変化,また,キャリアの志向性やその変化を把握した。これら調査と同時に,A法人が組織構成員に対して実施した人材育成施策を把握している。 結果から,A法人においては,経営者らによる人材育成事業が,雇用就農者のキャリアの志向性を変化させていることがわかった。特に,経営者らによって意図的にリーダー経験を適応させた雇用就農者は,その志向性を「従業員志向」から「独立志向」へ変化させている。「転職志向者」が「独立・従業員志向」へ変化する例も確認できた。また,組織構成員の減少への対応については,パート等の雇用増加への対応で,現場責任者を増やす対策を取っているが,志向性が「従業員志向」から「独立志向」に変化させる事例も確認できた。つまり,経営者らが実施する人材育成施策によって従業員の志向性は一定程度の変化を見せており,安定した従業員の確保のためには,キャリアの志向性に適した,または,従業員として継続的な雇用への動機づけを意識した人材育成施策が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で解明すべき課題として,①従業員のキャリアデザインの把握および変化の要因,②農業法人の従業員能力の解明,③キャリアデザインに応じた人材育成事業の把握の3点を提示している。2022年度は,研究課題のうち,①と③に係る課題について,農業法人における従業員のキャリア志向性を中心に,ヒアリング調査から事例的に把握するとともに、同法人が実施する人材育成事業の従業員への影響を明らかにした。これら事例研究の成果については日本農業経営学会において研究報告を実施し,現在,報告論文として投稿済み・査読中である。同様に,従業員のキャリアデザインと従業員が所属する組織における人材育成事業およびその成果の関係性については,北海道十勝地域を中心に北海道内10件程度の農業法人を中心とした雇用型農業経営で実施しているところであり,これら調査・研究の成果については今年度以降、研究報告等を実施する予定である。 加えて,2022年度に実施した調査・研究を踏まえると,従業員の職務満足度が,当該従業員らの人材育成および従業員能力に大きな影響を与えている事例が複数確認できた。そのため,2023年度以降については,計画時点での研究課題に加え,従業員の職務満足度の影響についても測定することで,従業員に対する適切な人材育成事業の展開方法等を踏まえた組織経営のあり方を明らかにすることを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降においても,農業法人を中心とした雇用型農業経営における従業員のキャリア形成および従業員能力の育成に係る調査・研究を継続して実施する。 加えて,2023年度からは研究計画時に設定した研究課題に加え,従業員の職務満足度を把握することで,従業員のキャリアデザインおよび従業員能力との関係性の解明を試みる。 職務満足の改善は,組織への定着率向上に大きな影響を与える要因であり,すなわち,従業員のキャリア志向性の変化に影響するものと考えられる。 特に,2022年度に実施した事例調査によると,「責任者・リーダー経験」を付与した従業員のキャリア志向性が「従業員志向」から「転職志向」に変化していることが明らかになっていることから,それらキャリア志向性の変化と職務満足度の関係性を把握することで,人材育成事業そのものがキャリア志向性の変化に与えた影響を明らかにすることが可能となる。
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Causes of Carryover |
研究代表者自身の新型コロナウイルス感染や調査対象組織内での新型コロナウイルス感染者が発生したことなどに伴い,調査日程の変更やオンライン対応となったことで,次年度使用額が発生した。今年度はそれら感染症の影響が軽減されることが期待できるため,前年度に調査が実施できなかった経営体への調査を実施する予定である。また,2023年度以降,計画時点から研究課題を拡張し,従業員の職務満足調査の実施を予定していることから,前年度余剰使用額については,当該調査・研究に係る調査旅費および調査票作成のための印刷用紙および調査補助の学生アルバイトの謝金等に使用する。
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Research Products
(1 results)