2022 Fiscal Year Research-status Report
搾乳ロボットのパフォーマンス向上に関する実証的・学際的研究
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22K05870
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山本 直之 宮崎大学, 農学部, 教授 (10363574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 太一 宮崎大学, 研究・産学地域連携推進機構, 准教授 (40541355)
槐島 芳徳 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10253808)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 搾乳ロボット / 牛個体識別 / ストレス検出 / 経営的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の酪農経営において搾乳ロボット導入は、一定の経営的効果があることが明らかになっているが、ただし今後は、同技術を基軸として、その前後技術を含めた家畜個体管理はどうあるべきか、また、関連する技術として何が求められているか、具体的に解明していく必要がある。 本研究では、搾乳ロボット導入の経営的評価を、搾乳ロボットの前後を含めた技術的・経済的諸要因との関連を踏まえ類型別に行う。さらに、個体管理及び家畜福祉充実に資する技術として画像認識AI等の技術を用いた牛の個体識別及びストレス検出方法の提案・検証を行い、優良牛群形成システムを構築、その経営的評価を行う。 以上を踏まえ、本研究においては、個々の牛の持つ能力を最大限に発揮し、搾乳ロボットの持つパフォーマンスをトータルとして最大限に発揮するためにはどのような方策が望ましいか、経営経済学、並びに情報工学の両面から学際的に明らかにすることを目的とする。 なお、経営的評価においては、単に搾乳ロボットだけではなく、疾病や乳質などの分析が可能な関連機器、施設、作業体系等を含めたトータルの評価を行うが、それに飼養衛生管理基準への対応や耐用年数等を含めた経営戦略との関連を考察することにより、搾乳ロボットの普及に向けての課題と方向性を具体的に明らかにすることを目的とする。 一方、情報工学的視点においては、牛個体識別及びストレス検出を瞬時に判断できる画像認識 AI 技術(顔認証アルゴリズムやディープラーニング)を新たに提案する。これら技術を駆使した牛個体管理と家畜福祉の充実による優良牛群形成システムの構築と経営的評価を一体的に行うことで、革新的経営戦略の一助としたい。そのためにも科学的判断基準を持った裏付け、すなわち学術的に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
搾乳ロボットの技術と経営的評価に関しては、まず現在の飼養状況を把握するため、酪農経営や関係機関に愛する聴き取り調査を実施した。その結果、宮崎県内の13戸の経営体における搾乳ロボットの導入状況の基本的データを収集した。また併せて、モデル経営における1日当たり平均乳量と泌乳スピードとの関連、並びに牛群ごとの違いを分析した。その結果、泌乳スピードが極端に低い牛は乳量も低いことが確認されるとともに、仮に泌乳スピードが下位2割の牛を入れ替えた場合には経済的効果が認められることが確認された。 「搾乳ロボットのパフォーマンス向上のための類型別課題と改善方策の提案」に関する情報工学的視点の「簡易・迅速な牛個体識別及びストレス検出方法の提案・検証」は、2023年度から実施予定であるが、2022年度はその準備として、撮影システムの構築、牛ストレス判断のためのアルゴリズム構築及びその一部検証を行った。 具体的には、撮影システムはRaspberry Pi 4 Model B及びRealSense Depth Cameraを用いて遠隔操作可能なシステム(Linux、Pythonによる制御)を構築した。なお、データアップロードにはGoogleドライブ用のgdriveコマンドを用いた。 次に、ストレス判断のアルゴリズム構築は、MATLAB R2022bを用いて構築した。上記システムを用いて撮影された牛群の各牛に対し、①牛である認識(カスケード型オブジェクト検出器を適用)、②牛個体の識別(HOG特徴を適用)及び③牛個体ごとのストレス判断を行うものである。2022年度は①②の実施(宮崎大学住吉フィールド乳牛を対照n:20))を行いその有用性確認を行ったところ、①で95%、②で85%の精度を有することが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
搾乳ロボットの技術と経営的評価に関しては、2023年度は県内の酪農経営に対する技術的・経済的側面からの調査を進め、種々の要因と乳量や収益性との関連について分析を行う。 情報工学的視点に関しては、 2023年度は識別された牛に対してのストレス判断として、得られた牛画像の生体情報としてストレスに起因する特徴量を抽出し、ストレス値となる例えばコルチゾール濃度や生産者目視判断との関係を見出す。 そして、経営に関する基本情報と情報工学的視点の成果をもとに、今後、搾乳ロボットのパフォーマンス向上のための方法について検討していく必要がある。
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Causes of Carryover |
酪農経営サイドへの調査や選定、実証に時間を要したことなどが原因であるが、次年度は関係機関との連携のもとに着実に進めていく。
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