2022 Fiscal Year Research-status Report
自然氷の冷熱利用を促すための省エネ効果と冷熱賦存量の評価方法の検討
Project/Area Number |
22K05900
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
木村 賢人 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (60596675)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 氷冷熱利用 / 省エネ効果 / 賦存量 / アイスシェルター / 自然エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然氷の冷熱の省エネ効果と地域に存在する冷熱賦存量の評価方法を確立することを目的としている。少雪寒冷地域の北海道十勝地方は自然冷気のみで大量の氷を製造できるポテンシャルを有している。本研究は、帯広市に建設された自然氷の冷熱を利用した実証実験用の農産物貯蔵庫で観測を行い、その結果から省エネ効果と賦存量を検討する。さらに、十勝地方を対象に利用可能な氷冷熱の賦存量を推定する。最終的に、それぞれで得られた結果を結合解析し、氷冷熱の省エネ効果と賦存量を明らかにすることを目指す。 2022年度は、農産物貯蔵庫内の貯氷室にある氷の融解・凍結状況と、その部屋に隣接する貯蔵室に送風される冷気の状況を観測した。さらに、既往の熱収支式と製氷モデルから融解量と製氷量を推定した。その結果、夏期の融解量は約85トン、冬期の製氷量は約125トンと推定され、それぞれの推定量は水温観測から得られた融解・凍結状況とほぼ一致した。なお、2022年度は推定された製氷量および水温観測の結果から、貯氷室内のすべての水が凍結した。また、夏期は融解状況から氷が10月末日まで残存したことから、貯蔵室に送風される冷気は10月中旬頃まで5℃未満で推移した。同様に、冬期においても0℃前後の冷気が送付された。氷冷熱賦存量は、農研機構から提供されているメッシュ農業気象データと前述した製氷モデルを用いて、十勝地方を対象に計算した。ただし、立地条件や貯蔵庫の規模などは考慮せず、各メッシュの気温と既往の研究から得られた貯氷室内の平均的な総括熱伝達率である8.0W/m2℃で賦存量を用いて計算した。その結果、当然のことではあるが、気温の年変動により賦存量は変化した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
結合解析のために進めていた数値シミュレーションについて思うような結果が得られなかった。それにより、賦存量の計算時に考慮すべき諸条件に関する文献調査が予定通りを行うことができなかった。ただし、全体的には大きな遅れには至っていないと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の通り、2023年度は2022年に得られた観測データおよび解析結果を精査するとともに、省エネ型農産物貯蔵庫で引き続き観測を行う。 (1)2022年度の貯蔵庫に設置した熱流計による観測結果も加えて、熱収支解析を行う。さらに、2022年度以前の観測データから貯蔵室に環境調節に使用された「有効氷量」とこの有効氷量を維持するために使用された「必要氷量」についてそれぞれ定量化する。 (2)2022年度の算出した氷冷熱賦存量は諸条件を考慮せずに計算されたため、潜在賦存量に相当する。2023年度は諸条件に相当する期待可採条件を、他の自然エネルギーの賦存量に関する文献調査を行い検討する。その検討結果と氷冷熱に見合った期待可採条件を加えて、潜在賦存量から期待可採量を推定する。 (3)(1)と(2)の結合解析に必要な数値シミュレーションについて検討する。
|
Causes of Carryover |
熱流計やそれに関連する機器が予定より安く購入できたため残額が生じた。余剰金は、今後の観測に必要な測器の購入および旅費に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)