2022 Fiscal Year Research-status Report
ソーラーシェアリングにおける太陽光パネル群周囲のダイナミックな風の流れの解明
Project/Area Number |
22K05907
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田川 公太朗 鳥取大学, 農学部, 准教授 (30315113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
劉 佳啓 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 特命助教 (80823898)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 風洞実験 / 傾斜平板群 / 太陽光パネル模型 / 風速比 / 風速低減効果 / 風速分布 / 粗度長 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光発電パネル群を模擬して,規則的に配列された傾斜平板群周辺部における風速分布変化について検討した.まず,風洞床面に設置した傾斜平板に流入させる風速条件を設定するために,地表面境界層の検討を行い,草地から砂丘地に相当する風速分布を模擬することができた.次に,地上高さ20 m程度までの風速分布と傾斜高さ3 m程度の太陽光パネル群を模擬して,実サイズの約1/100倍で太陽光パネルの模型をアルミ板で作製した.そして,平板群の直近から後方の各位置における鉛直方向風速分布を多点設置した熱線風速計で測定し,平板群下流域の風速分布の変化に及ぼす平板の列数(3,6,9列)および傾斜角度(10°, 20°,30°),ならびに傾斜平板へ流入する風向き(順風:太陽光パネル表面側へ流入,逆風:裏面側へ流入)の影響を検討した. 平板群に流入する鉛直方向風速に対する下流域での鉛直方向風速の比(以下,風速比)について,いずれの風向き条件においても,平板高さの4倍程度まで高さにおける風速比は,平板群の下流近傍で0.1~0.2程度まで低下したのち,下流域へと進むにつれ,風速比が0.8~0.9まで回復する傾向を示すことが明らかとなった.また,風向条件にかかわらず,パネル列数が増加すると,下流域における風速比の低下の度合いが大きく,風速比に及ぼす傾斜角度の影響が顕著になることも明らかになった. これらのことは,実際の太陽光パネル群による自然風の風速を低減させる効果の度合い・範囲を示す基礎的な知見であり,平板群まわりの流れの可視化と併せて検討することで,流れの構造をより詳細に明らかにすることができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
風洞実験において重要となる風の流入条件について,ソーラーシェアリングが導入されている農地や草地の粗度長に相当する風速分布およびその粗度長を調整し生成することができており,実験の精度を確保することができた.また,風洞の床面から天板面に熱線風速センサー12点を設置した可動式鉛直方向風速測定装置とデータ記録システムを構築し,水平方向および下流域方向に測定装置を移動させることで,広範囲な位置で風速測定が可能となった.これらの測定システムの構築と調整方法は,今後の風洞実験における多様な条件に対応でき,風洞実験を円滑に進めることができる. 本年度の実験において,傾斜平板群が風の流れに及ぼす影響を解明する上での基礎的かつ有用な知見が得られており,実験的研究を着実に進めることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として,2つの風洞実験を進めていく. 1)傾斜平板群の縦・横列数や間隔などを変えて配置した平板群近傍および下流域における鉛直方向の風速分布に関する風洞実験を引き続き実施し,傾斜平板群の配置形状および間隔が風速分布に与える影響を解明するとともに,影響の度合いを定量的に評価する実験式の導出を試みる. 2)ソーラーシェアリングの下方空間に植物体がある場合を模擬した模型を設置した場合の風洞実験の検討に着手する.まず,ソーラーシェアリングにおける栽培作物の種類および形態的特徴を調査し,太陽光パネル群と栽培作物からなる空間的構造の特徴を明らかにする.これをもとに,風洞試験の作物群落模型の条件設定および製作,ならびに流入風速分布の条件設定および調整を行う.植物体の模擬には,ポリスチレンなどのフィルム形状のものや植物体の模型などを選定することを想定している.これらの検討を進めていき,風洞実験手法を構築する.そして風洞実験に着手し,風速分布の測定結果をもとに,風速分布や風の乱れ分布に及ぼす諸因子の影響を検討する.
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Causes of Carryover |
本年度は,風洞実験手法および多点同時風速測定システムを構築するために,物品費として集中的に使用した.また,構築した風速測定システムにより,測定作業の効率がある程度向上したために,測定作業補助のアルバイト謝金を使用しなかった.これらのことが重なった結果,次年度使用額が生じることとなった.この使用額分について,消耗品や出張宿泊費が当初計画段階より値上がりしている状況にあるので,翌年度の助成金における消耗品費あるいは国内旅費として使用する計画である.
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