2022 Fiscal Year Research-status Report
CPCファミリーの機能解析を切り口とした、栄養欠乏時の根毛形成促進機構の解明
Project/Area Number |
22K05936
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
冨永 るみ 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (20373334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 東 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 特任助教 (20908230)
藤川 愉吉 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 講師 (10506687)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | CAPRICE / ENHANCER OF TRY AND CPC1 / 表皮細胞 / 根毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の根毛は、栄養欠乏時に過剰に形成され栄養吸収機能を維持することから、植物生産性を左右する重要な器官の1つである。シロイヌナズナCAPRICE(CPC)ファミリーは、根毛形成を促進する転写因子をコードする。CPCファミリー(7遺伝子;CPC、TRY、ETC1, 2, 3、TCL1, 2)のうち、ETC1はリン欠乏に応答して発現パターンを変えることが報告され、さらに、申請者らは根では通常発現していないETC3がリン欠乏時に発現することを見出した。そこで本研究では、シロイヌナズナCPCファミリーの機能評価実験によって、どの遺伝子がどのように根毛形成を促進しているのかを明らかにすることを目指す。 本年度の実験において、CPCと、CPCのホモログタンパク質であるENHANCER OF TRY AND CPC1(ETC1)の細胞間移行について比較・解析した。CPCは根の表皮細胞のうち非根毛細胞で発現し、根毛細胞に移行して根毛を形成する、一方ETC1は根の表皮の細胞間を移動することはない。CPCのどの領域が細胞間移動に関与しているかを理解するために、ETC1の特定のアミノ酸を置換した3種類のキメラコンストラクト(キメラ6、7、8)を作成し、野生型シロイヌナズナ(Col-0)に形質転換した。各トランスジェニック植物における根の表現型やCPCタンパク質の局在について調査した。その結果、CPCの24番目のアミノ酸であるシステインをETC1の20番目のアミノ酸のセリンに置換すること(キメラ8)は、CPCの根毛形成と細胞間移行に影響を与えることが示唆された。この結果は、CPCファミリーの細胞間移動能力の違いに寄与するアミノ酸配列について洞察を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナの根毛形成を制御するCPCファミリーの、機能評価解析を進めている。本年度は、CPCと、CPCのホモログタンパク質であるETC1の細胞間移行について比較・解析した。CPCは根の表皮細胞間を移行して根毛を形成するが、ETC1は細胞間を移動しない。CPCのどの領域が細胞間移動に関与しているかを理解するために、ETC1の特定のアミノ酸を置換した3種類のキメラコンストラクト(キメラ6、7、8)を作成し、野生型シロイヌナズナ(Col-0)に導入した。各トランスジェニック植物における根の表現型やCPCタンパク質の局在について解析した結果、CPCの24番目のシステインをセリンに置換する(キメラ8)と、CPCの根毛形成促進機能と細胞間移行能が阻害されることが明らかになった。この結果をまとめてJournal of Plant Biochemistry and Biotechnology誌に発表している。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナのCPCファミリーの細胞間移行機構について、引き続き解析を進める。また、リン欠乏培地で育て、根毛数が増加したシロイヌナズナにおける、CPCファミリー(CPC, TRY, ETC1, ETC2, CPL3)および根毛形成制御関連遺伝子群(WER, GL3, EGL3, GL2等)の発現を、Real-Time PCRによりさらに詳しく検証する。リン欠乏条件でのCPCファミリーpromoter::GUS発現(CPC::GUS, TRY::GUS, ETC1::GUS, ETC2::GUS, CPL3::GUS形質転換体は既に作出)を詳細に観察し、組織特異的な影響についても明らかにする。 トマトのホモログ遺伝子の機能については、CsTRYの過剰発現株およびゲノム編集による発現抑制株の作出に着手する。これら2つの系統については、既にコンストラクトの作成を終了しているので、トマトの形質転換を試みる。
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Causes of Carryover |
適切な執行を行なった結果、端数である次年度使用額が生じた。翌年度の物品費と合わせて使用する予定である。
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