2022 Fiscal Year Research-status Report
Effects of growth and aging on spermatogonial stem cells and its niche in rat
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22K05952
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中村 隼明 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (30613723)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 精子幹細胞 / 移植 / ラット / 宿主 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ラットにおいて精子幹細胞の数・活性・動態と、幹細胞を維持する微小環境 (ニッチ) の活性が、生涯を通じてどのように変化するか明らかにすることである。2022年度は、ラット精子幹細胞移植の実験系の確立と、移植に用いる宿主の評価を実施した。 マウス生殖細胞を効率的に除去することができる1,4-Butanediol dimethanesulfonate (ブスルファン) の投与条件をラットにおいて検討した結果、生後2週令のオス個体に12 mg/kgを投与することで、内在性生殖細胞を最も効率的に除去することができた。しかし、この方法では、内在性の精子幹細胞がコントロール区の65%程度残存しているため、時間の経過に伴って内在性の精子形成が再生した。一方、PRDI-BF1 and RIZ homology domain containing protein 14 (Prdm14) 欠損ラットでは、支持細胞であるセルトリ細胞の数はコントロール区と比較して変化することなく、内在性生殖細胞が完全に枯渇することを明らかにした。 続いて、全身で赤色蛍光タンパクを発現するRosa26-tdTomatoラット成獣由来の精巣を単一細胞に解離し、ブスルファン処理したラットあるいはPrdm14欠損ラット精巣へ移植した。その結果、移植60日後には、宿主ラット精巣においてドナー精子幹細胞に由来するtdTomato陽性のコロニーが観察された。また、精巣細胞50万個あたりのコロニー形成効率は12.8個であった。一方、胎児期の生殖細胞で特異的に発現するPrdm14遺伝子の欠損ラットについては定量的な解析は完了していないものの、コロニー形成効率がブスルファン投与ラットと比較して増加する傾向があるという予備的データが得られつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラットはマウスと比較して,輸精管の構造が異なるため移植が技術的に困難であるため、その習得に予想以上に時間を要した。また、種親の繁殖障害によってPrdm14欠損ラットの個体を予定通り得られることができず、予備役なデータが得られるに留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究成果から、ラット精子幹細胞の精細管内移植後のコロニー形成効率は、マウスと比較して高いことを予備的に見出している。このため、2023年度はラットとマウスを用いて同一の条件で精細管内移植を行い、それぞれの精子幹細胞のコロニー形成効率を比較評価する。これまで、精子幹細胞の移植後のコロニー形成効率を直接的な比較はなされていないため、基礎面において重要な知見が得られると期待される。また、ラットは体のサイズが大きいため、解析できる個体数に限界がある。そこで、2023年度は免疫不全マウスへの異種間移植を利用して、ラット精子幹細胞の活性を正確に解析できるか検討する。ラット精子幹細胞の同種間移植と異種間移植の効率に差が認められなければ、ヌードマウスを用いてデータ解析を進めることで、本研究の遂行を加速させることができると期待できる。
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