2023 Fiscal Year Research-status Report
Effects of growth and aging on spermatogonial stem cells and its niche in rat
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22K05952
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中村 隼明 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (30613723)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 精子幹細胞 / 移植 / ラット / 宿主 / 免疫不全マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ラットにおいて精子幹細胞の数・活性・動態と、幹細胞を維持する微小環境の活性が、生涯を通じてどのように変化するか明らかにすることである。2023年度は、生殖細胞の形成不全を呈するPrdm14欠損ラットとブスルファンの投与によって内在性生殖細胞が完全に除去された免疫不全マウスを宿主に用いて、ラット精子幹細胞の活性と動態を解析した。 ラット精子幹細胞の移植によって形成される精子形成のコロニー数を、同種間 (ラット-ラット) と異種間 (ラット-免疫不全マウス) の移植で比較した結果、両者に有意な差は認められなかった。一方、形成されたコロニーを詳細に解析した結果、異種間移植では同種間移植と比較してコロニーの長さは短く、コロニーに含まれる精子幹細胞の数は少ないことが明らかとなった。精子幹細胞は細胞質分裂が不完全であるために細胞間橋によって連結した合胞体を形成するとともに、細胞間橋がちぎれることによって合胞体の断片化が起こる。従って、不完全分裂と断片化の頻度によって合胞体の構成比が変化する。ラット精子幹細胞の移植によって形成されたコロニーにおける精子幹細胞の構成比については、同種間移植では8個以上の合胞体の割合が高かったのに対し、異種間移植では単一細胞の割合が高かった。興味深いことに、宿主ラットならびに宿主免疫不全マウスにおける精子幹細胞の合胞体の構成比は、それぞれ正常なラットと正常なマウスにおける構成比とほとんど同じであった。以上の結果より、免疫不全マウスへの異種間移植を利用してラット精子幹細胞の活性を定量的に解析することができるが、コロニーの長さや、コロニーに含まれる精子幹細胞の数と合胞体の構成比に顕著な違いが認められたことから、移植された精子幹細胞は宿主となる動物種の微小環境の影響を受けることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来計画していた生殖細胞の形成不全を呈するPrdm14欠損ラットに加えて、ブスルファンの投与によって内在性生殖細胞が完全に除去された免疫不全マウスを宿主に用いたことで、ラット精子幹細胞の活性と動態、さらには幹細胞を維持する微小環境の活性について、動物種を超えた比較解析が可能になり、興味深い結果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
Prdm14欠損ラットとブスルファンの投与によって内在性生殖細胞が完全に除去された免疫不全マウスを宿主に用いて、ラット精子幹細胞の数・活性の成長・加齢に伴う変化について解析を進める。一方、ニッチの活性の成長・加齢に伴う変化については、ラットではマウスと比較して輸精管の構造が異なるために成獣での移植が技術的に困難であるため、免疫不全マウスを利用して解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2024年3月分のラットの飼育費の確定と費用振替が年度をまたいだため差額が生じた。 生じた差額は2024年度の飼育費に充てる予定である。
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