2022 Fiscal Year Research-status Report
ヤギの季節繁殖性を周年繁殖性に変換固定することは可能か
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22K05960
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
野村 こう 東京農業大学, 農学部, 教授 (60277241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 幸水 東京農業大学, 農学部, 助教 (50408663)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 周年繁殖 / 季節繁殖 / ヤギ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヤギは牛に比較し小型で扱いやすく、今後は女性や高齢者による管理が容易な家畜として特に山間部農村の地域おこしやSDGs達成のための家畜として有力であると期待される。その乳は畜産先進国であるヨーロッパでは嗜好性の高いチーズなどの加工品の原材料としても珍重され、需要が高い。また最近では食物アレルギーが問題となっており、牛乳に対してアレルギーを持つ人も多いが、ヤギ乳にはそのような抗原性は無いとされ、注目されている。日本におけるヤギ乳普及の第一のネックは、年間を通じた生産ができないという欠点である。すなわち乳用ヤギザーネン種は春季にしか仔を生まず(季節繁殖性)、泌乳期間は出産後10ヶ月であるので、冬季には乳の生産が無い。 乳用ヤギに年間を通じて出産できる特質(周年繁殖性)を付与するため、この形質をもつ日本の在来種シバヤギと乳用ヤギザーネン種を交配する実験家系を作出した。雄シバヤギ1頭、雌ザーネン6頭を用いてF1世代36頭を作出したところ、全ての雌個体が周年繁殖性を示し、この形質の乳用種への導入に成功した。ザーネンへの戻し交配のN2世代58頭のうち、現在までのところ雌の約80%が周年繁殖性を示している。以上のことからシバヤギの持つ周年繁殖性はザーネン種に対して優性であり、その発現には同義遺伝子として働く複数の遺伝子が関与している可能性が示された。 この遺伝子の特定のため、シバヤギおよび韓国在来ヤギを用いて、ヤギ染色体上にマップされた約200種の既報マイクロサテライトマーカーのアリルレンジを決定し、マルチプレックスPCRマーカーグループを36種作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はリソースファミリー個体の周年および季節繁殖形質の記録と整理、家系整理を行い、遺伝様式の把握をすることが出来た。またリソースファミリー各個体のDNA精製が終了し、DNA解析に用いる約200種のマイクロサテライトマーカーについてもシバヤギとザーネン種を用いてアレルレンジの測定を行った。さらにその結果からマルチプレックスPCRマーカーグループを36種類作成した。今年度精製したリソースファミリーのDNAは今後予定しているSNP解析および次世代シーケンーサーによる全ゲノムリシーケンスにそのまま用いることができ、2年度の実験準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
周年繁殖性・季節繁殖性に関連する遺伝子領域を明らかにする。 初年度はシバヤギおよびザーネンのDNAサンプルを用いて、ヤギ染色体上にマップされINRAにより公開されているヤギリンケージマップのマイクロサテライトマーカーから本家系の調査に適した140マーカーを選抜した。次年度はこれを用いてリソースファミリーのQTL解析を行う。さらに実験家系戻し交配第1世代(BC1世代)で周年繁殖性を示した個体と、季節繁殖性を示した個体のDNAをそれぞれバルク化し、全ゲノムリシーケンスし、プロットパターンの比較により繁殖性関連遺伝子候補領域を推定する。合わせてヤギSNPチップによるリソースファミリー個体の解析からも候補遺伝子領域の推定を試みる。一方、 これまでの文献からヤギの周年・季節繁殖性に関連すると考えられるプロラクチン、黄体形成ホルモン(LH)、メラトニン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、2型脱ヨウ素酵素 (DIO2)、性腺資源ホルモン放出ホルモン(GnRH)などの遺伝子について、ザーネン種およびシバヤギそれぞれ25頭を用いて多型解析を実施する。
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Causes of Carryover |
初年度の実験がDNAの精製とマイクロサテライトマーカーの選定であったため、外注を必要とせず費用を抑えることが出来た。次年度はSNPチップ解析、次世代シーケンサーを用いた複数サンプルの全ゲノムリシーケンスを計画しているため、前年度未使用経費と併せてこの資金としたい。
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