2022 Fiscal Year Research-status Report
長稈型ムギ類を用いた二期作栽培による粗飼料と濃厚飼料の連続生産
Project/Area Number |
22K05966
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
秋本 正博 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (60312443)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
義平 大樹 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (50240346)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ライコムギ / 二期作栽培 / 窒素 / 粗飼料 / 濃厚飼料 |
Outline of Annual Research Achievements |
ライコムギやエンバクなどの長稈型ムギ類は,出穂期に茎葉部を刈取ると2番草が再生し結実を行う.この特性を活用し,1番草として収穫した茎葉部を粗飼料として,2番草から収穫した種子を濃厚飼料として利用する二期作栽培が可能である.2022年度の研究では,秋播性ライコムギを供試材料に,融雪後の起生期,および1番草の収穫後に行った窒素追肥が,1番草,および2番草の生育や収量に及ぼす影響を調査した. 起生期の窒素追肥量を0g/m2,3g/m2,6g/m2と多くするに従い,1番草の草丈が高くなり,茎数が増加した.乾物収量も平均で760g/m2,860g/m2,930g/m2と追肥量の増加に伴い高くなった.1番草の可消化養分総量(TDN)は,追肥量が多いほど高くなる傾向を示したが,有意差は無く平均で62%程度であった.TDN収量は,追肥を6g/m2行った試験区で最も高かったが,これは乾物収量が多かったことに強く起因すると考えられる. 起生期の追肥量を3g/m2と一定にし,1番草収穫後の追肥量を0g/m2,3g/m2,6g/m2と変化させると,追肥量の多い試験区ほど2番草の再生が良好で,茎数が多くなった.種子収量は,1番草収穫後に追肥を行うことで高まったが,施用量が3g/m2の試験区と6g/m2の試験区の間には有意差が認められず,ともに平均で400g/m2程度であった. 本研究の結果から,ライコムギの二期作栽培において1番草の収量を高めるためには起生期の窒素追肥が重要であり,今回設定した施用量の中では6g/m2で最も高い乾物収量,およびTDN収量を得られることが明らかになった.また,2番草の種子収量を高めるためには1番草収穫後の窒素追肥が重要であるが,3g/m2以上の施用を行っても更なる増収は期待できないことが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の試験では,当初より秋播性ライコムギを用いた窒素肥培試験を計画していた.試験を行った北海道帯広市では,2021年から2022年にかけての冬期に降雪が少なく越年生ムギ類の凍害が懸念されたが,供試した植物に大きな障害はなく,計画通りに試験を遂行し研究実績の概要に示した成果を得ることができた.当該研究の成果は,日本草地学会第79回発表会,および日本作物学会・日本育種学会北海道談話会令和4年度講演会において講演発表しており,学術論文の作成にも着手している. 一方で,研究材料として挙げていたエンバクについては,2022年度に1番草の収穫適期を評価する試験を計画していたが,収穫期に研究代表者が新型コロナウイルスに感染してしまい,試験そのものを中止せざるを得なくなってしまった.当該課題については十分な進展を図ることができなかったため,2023年度に改めて実施を計画している. 2022年の9月に帯広畜産大学,および酪農学園大学の実験圃場へと秋播きライコムギの播種を行い,2023年度の栽培試験に用いる圃場を造成した.2023年度に実施を予定しているライコムギの試験を円滑に開始することが可能な状態である.
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度に行った秋播きライコムギの肥培試験については,年次間の反復試験を行うとともに,北海道の太平洋側に位置する帯広市と日本海側に位置する江別市において比較試験を行い,気象や土壌の条件の違いがライコムギの生育や肥培法に及ぼす影響について考察を行う計画である. エンバクの二期作栽培に関しては,1番草の収穫適期に関する既報研究が存在しない.2023年度は,2022年度に遂行できなかったエンバクの1番草収穫試験を改めて実施する.エンバク3品種を用いて,穂ばらみ期から乳熟期にかけての異なる生育ステージに1番草を収穫し,その収量や栄養価を評価するとともに,刈取り後の再生力や2番草の収量を調査することで,二期作栽培を効果的に行うための1番草の収穫適期を模索する計画である. ライムギ,およびエンバクの二期作栽培を行うにあたり,品種の特性と栽培適性との関係について知見が得られていない.2023年度は,二期作栽培用品種の育成を最終目標に,1番草の収量や刈取り後の再生力,2番草の収量に優れた品種の選抜を行う計画である.この試験を行うにあたり,秋播性ライコムギ6品種,およびエンバク6品種の栽培を開始している. 反復試験による結果が得られた課題から,成果を学術論文や講演会を通じて公開するとともに,生産現場への実装を図っていく計画である.
|
Causes of Carryover |
2023年3月の融雪期に酪農学園大学の試験圃場へと散布する肥料を同月に購入する予定であったが,肥料の品不足により販売業者からの納品が期日に間に合わず年度内に購入が行えなかった.そのため,2022年度の物品費の一部を次年度に繰り越し,肥料の購入が可能になった段階で使用することにした.
|
Research Products
(2 results)