2023 Fiscal Year Research-status Report
暖地型イネ科・マメ科混播草地の造成と管理方法の検討並びに土壌共生菌活用方法の検討
Project/Area Number |
22K05971
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
飛佐 学 宮崎大学, 農学部, 教授 (30332844)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 暖地型マメ科牧草 / 生産性 / 根粒菌 / アーバスキュラー菌根菌 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
圃場研究では,暖地型マメ科草を組み入れた効率的な草地管理利用法を確立することを目標に,南九州地域で利用可能な暖地型マメ科牧草を選定するため,7種の暖地型マメ科牧草を3カ所の試験地で栽培し,乾物収量,根粒着生,アーバスキュラー菌根菌(AM菌)の菌根形成状況などを調査した。試験地間の比較を行ったところ,乾物収量は試験地1ではファジービーン(Pb),試験地2ではサイラトロ(Si),試験地3ではバーガンディビーン(Bb),Si,Pbが高い傾向となり,試験地の土壌や気象条件により生育に差が示されたが,多年生のグリーンリーフデスモディウム(Gd)やグライシン(Gl)が低い傾向を示した。根粒形成は,全ての草種で確認でき,AM菌の菌根形成も全ての草種で確認された。 2022年から2023年へ越冬したマメ科個体を調査したところ,多年生のGdとGlの越冬が確認され,越冬率はGdで86-98%,Glで4-6%であった。乾物収量については,Gdは1年目(2022年)より増加した。 試験地2の7草種について,サイレージの発酵品質を調査した結果,pHについてはPbで4.2以下と低く,良質な発酵品質が示された。 種子成長袋を用いて,PbとSiを供試し,根粒菌・AM菌の接種が初期生長や根粒菌・AM菌の共生関係に及ぼす影響について根粒菌の有無の2水準,AM菌の有無の2水準の処理を設け,インキュベーター内で栽培し検討した。根粒はPbおよびSi共に根粒菌接種後9-12日目頃に確認され,菌根形成はPbではAM菌接種後17-21日目頃,Siでは14日目頃に確認された。両草種においてAM菌無処理区の乾物重がAM菌有処理区に比べて高い傾向にあり,これら植物の生育初期段階での AM菌との共生は,植物の成長を抑制している可能性が考えられ,また根や茎葉の伸長を促す窒素を供給する根粒との共生を優先していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圃場試験においては,3試験地域において新規導入暖地型マメ科牧草の特性,根粒形成状況,菌根形成状況,サイレージの発酵品質を調査,検討することができ,一部調査が終了していないものもあるが,ほぼ計画通りに実施できた。ポット(種子成長袋)試験においては,初期生育時の根粒形成とアーバスキュラー菌根菌の菌根形成の時期がおおよそ確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
圃場試験においては,2022-2023年度に造成したマメ科草地の越冬性について検討する。また,3試験地域において生産性に一貫性が見られなかった草種も存在したことから,対象となる草種について土壌,気象条件と生育についての関係を検討する。現時点で南九州地域での栽培利用の有望な草種について,イネ科牧草との混播栽培試験を実施し,生産性,根粒形成,菌根形成状況,家畜飼料としての栄養成分の評価などから,混播栽培方法の検討を行う予定である。ポット試験においては,暖地型マメ科牧草(圃場試験で供試した草種)を用い,牧草の生育状況をリン施用量の影響から調査すると共に,根粒形成,菌根形成,植物体内窒素およびリン含量等について詳細な調査を行い,植物と根粒,菌根の関係について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
一部の調査(菌根形成状況,サイレージの発酵品質についての詳細な調査)を年度内に実施できなかったため,次年度に実施予定で,調査に必要な試薬や器具等を購入する予定である。また,成果発表予定の学会大会が年度内に実施されなかったため,次年度に発表(旅費使用)予定である。
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