2022 Fiscal Year Research-status Report
アフリカのコウモリが保有する病原性未知の新規コロナウイルスに関する研究
Project/Area Number |
22K05981
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
梶原 将大 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 准教授 (70711894)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コロナウイルス / アフリカ / コウモリ / 人獣共通感染症 / 新興感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
コウモリは遺伝的に多様なコロナウイルスを保有する。新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) がそうであったように、コウモリが保有する病原性未知のコロナウイルスが次なるパンデミックを引き起こす可能性は十分に考えられる。我々は過去の研究において、ザンビアに生息するエジプトルーセットオオコウモリからベータコロナウイルス属ノベコウイルス亜属に分類される新規ウイルスを検出した。本年度は陽性コウモリのRNAを用いて次世代シークエンス解析を実施し、ウイルスゲノムのほぼ全長に相当する約29キロ塩基の配列が得られ、カメルーンのコウモリから検出されたウイルスと近縁 (相同性96.5%) であることがわかった。また、上記コウモリと同じ洞窟に生息する他種コウモリ53頭のうち3頭のスワブ検体からベータコロナウイルス遺伝子を新たに検出した。遺伝学的解析の結果、ヒベコウイルス亜属の新規ウイルスであることがわかった。以上の結果から、ザンビアのコウモリが多様なコロナウイルスを保有する状況が明らかとなった。 上記ノベコウイルスの表面糖タンパク質 (S) 遺伝子を哺乳類細胞発現プラスミドにクローニングし、同Sタンパク質をまとった水疱性口内炎ウイルスを基礎としたシュードタイプウイルスを作出した。本シュードタイプウイルスを由来の異なる培養細胞に接種したところ、Vero E6細胞は非感受性な一方で、293細胞は感染が成立することがわかった。さらに、ヒトの膜貫通型セリンプロテアーゼTMPRSS2発現により感染性の増強が見られた。一方で、SARS-CoV-2の受容体であるアンギオテンシン変換酵素ACE2の発現はノベコウイルスSタンパク質を介した感染性には影響がなかった。今後、同ウイルスの感染メカニズムに関するより詳細な解析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は上記ノベコウイルスのウイルスゲノムほぼ全長に及ぶ塩基配列を決定することができた。同データを用いることで、本研究の主要なマイルストーンの一つである分子系統学的な解析を実施することができた。また、ノベコウイルスを検出したコウモリとは異なる種のコウモリのスクリーニングにより、新たなベータコロナウイルス(ヒベコウイルス)の存在を明らかにした。本発見は当初想定していなかった追加的な成果と言え、ヒベコウイルスを今後の研究活動に組み込むことにより、コウモリが保有するコロナウイルスに関する追加的な知見が得られることが期待できる。また、本年度はノベコウイルスのシュードタイプウイルスの作成および感受性細胞の特定を達成することができた。本システムの確立は、さらに感受性の高い細胞の樹立や感染に必要な宿主因子の特定など、今後のより詳細な研究・解析を実施するための礎となる。ウイルス分離は今のところ達成できていないが、今年度の研究により得られた知見を動員することにより、ウイルス分離の可能性の高いプロトコルの策定など今後の研究の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ザンビアのコウモリから検出されたノベコおよびヒベコウイルスのS遺伝子を保有する多段階増殖可能な組換え水疱性口内炎ウイルスを作成に着手する。同組換えウイルスおよび上記シュードタイプウイルスを併用して、コウモリ由来細胞を含む異なる培養細胞に対するウイルス感受性試験を実施する。同試験により特定した高感受性の細胞および乳飲みマウス等に対して、コウモリ由来コロナウイルス陽性検体を接種しウイルスの分離を試みる。ウイルス分離に成功した場合、実験動物を用いて感染実験を実施し、コウモリ以外の哺乳類に対する感染性および病原性について評価する。また、CRISPR/Cas9システムに基づく網羅的な遺伝子ノックアウトあるいは発現増強細胞ライブラリに対して、上記の分離ウイルスあるいは組換え水疱性口内炎ウイルスを接種し、ウイルス感染に対して抵抗性の細胞を選択する。選択細胞の次世代シークエンス解析により、ノベコおよびヒベコウイルスの感染・増殖に促進的あるいは抑制的に関与るす宿主因子を同定する。 精製した分離ウイルス、ウイルス様粒子あるいは組換え水疱性口内炎ウイルスをBALB/Cマウスに投与し、免疫血清を調整する。また、免疫マウスの脾臓細胞から、フュージョン法によりモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作出する。これらの材料を用いて、コウモリ由来コロナウイルスと既知のコロナウイルスとの抗原性を比較する。また、中和抗体を用いて中和メカニズムの解明に向けた知見を得る。
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Causes of Carryover |
本年度は想定よりも物品費の支出が少なかったため当該助成金が生じた。本年度、研究代表者は所属異動があり、新規配属された研究室には使用可能な試薬・消耗品等のストックがすでに豊富にあったため、新たに試薬・消耗品等を購入する必要がなかった。次年度は、ノックイン/ノックアウト細胞ライブラリを用いたウイルス感染に関わる宿主因子の特定のために、次世代シークエンス解析などの高額解析を実施する予定である。また、本年度使用する消耗品・試薬等は購入する必要があり、予定通りの経費執行を予定している。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Detection of Old and New World Relapsing Fever Borreliae in Ornithodoros Ticks Collected from Warthog Burrows in Zambia2023
Author(s)
Qiu Y, Chambaro HM, Sato K, Squarre D, Simulundu E, Kajihara M, Changula K, Simbotwe M, Harima H, Ndebe J, Moonga L, Nakao R, Takada A, Hang’ombe BM, Sawa H, Kawabata H
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Journal Title
Microorganisms
Volume: 11
Pages: 200
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Isolation and Characterization of Distinct Rotavirus A in Bat and Rodent Hosts2023
Author(s)
Kishimoto M, Kajihara M, Tabata K, Itakura Y, Toba S, Ozono S, Sato Y, Suzuki T, Ito N, Changula K, Qiu Y, Mori-Kajihara A, Eto Y, Harima H, Mwizabi D, Hang’ombe BM, Hall WW, Takada A, Orba Y, Sawa H, Sasaki M
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Journal Title
Journal of Virology
Volume: 97
Pages: e0145522
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Current status and molecular epidemiology of rabies virus from different hosts and regions in Malawi2023
Author(s)
Kainga H, Chatanga E, Phonera MC, Kothowa JP, Dzimbiri P, Kamwendo G, Mulavu M, Khumalo CS, Changula K, Chambaro H, Harima H, Kajihara M, Mkandawire K, Chikungwa P, Chulu J, Njunga G, Chitanga S, Mubemba B, Sasaki M, Orba Y, Qiu Y, Yamagishi J, Simulundu E, Takada A, Namangala B, Sawa H, Muleya W
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Journal Title
Archives of Virology
Volume: 168
Pages: 61
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Seroprevalence and Associated Risk Factors of Rift Valley Fever in Livestock from Three Ecological Zones of Malawi2022
Author(s)
Kainga H, Phonera MC, Chatanga E, Kallu SA, Mpundu P, Samutela M, Chambaro HM, Kajihara M, Shempela DM, Sikalima J, Muleya W, Shawa M, Chulu J, Njunga G, Simuunza M, Takada A, Sawa H, Simulundu E, Saasa N
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Journal Title
Pathogens
Volume: 11
Pages: 1349
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Genomic Surveillance of SARS-CoV-2 in the Southern Province of Zambia: Detection and Characterization of Alpha, Beta, Delta, and Omicron Variants of Concern2022
Author(s)
Katowa B, Kalonda A, Mubemba B, Matoba J, Shempela DM, Sikalima J, Kabungo B, Changula K, Chitanga S, Kasonde M, Kapona O, Kapata N, Musonda K, Monze M, Tembo J, Bates M, Zumla A, Sutcliffe CG, Kajihara M, Yamagishi J, Takada A, Sawa H, Chilengi R, Mukonka V, Muleya W, Simulundu E
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Journal Title
Viruses
Volume: 14
Pages: 1865
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Detection of Tick-Borne Bacterial and Protozoan Pathogens in Ticks from the Zambia-Angola Border2022
Author(s)
Qiu Y, Simuunza M, Kajihara M, Ndebe J, Saasa N, Kapila P, Furumoto H, Lau ACC, Nakao R, Takada A, Sawa H
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Journal Title
Pathogens
Volume: 11
Pages: 566
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Cross-species Infection of Nairovirus and Borrelia species in Bat Population in Zambia2022
Author(s)
Kajihara M, Qiu Y, Katendi C, Mori-Kajihara A, Okuya K, Nao N, Nakao R, Sato K, Eto Y, Harima H, Sawa H, Simulundu E, Mwizabi D, Hang'ombe BM, Kawabata H, Sawa H, Takada A
Organizer
19th International Bat Research Conference
Int'l Joint Research
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[Presentation] Marburgvirus in Egyptian fruit bats in Zambia2022
Author(s)
Kajihara M, Changula K, Hang’ombe B, Qiu Y, Mori-Kajihara A, Miyamoto H, Eto Y, Harima H, Ogawa H, Mwizabi D, Sawa H, Mukonka V, Simulundu E, Takada A
Organizer
10th international Filovirus Symposium
Int'l Joint Research
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