2023 Fiscal Year Research-status Report
イヌ悪性黒色腫細胞のTRPA1誘導性細胞死とエピジェネティック制御による耐性獲得
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22K05994
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中山 智宏 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00419649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 令 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (60755619)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イヌ悪性黒色腫細胞 / 細胞死 / アルカリ性環境 / TRPA1 / アルカリセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イヌ悪性黒色腫の腫瘍内pH環境と細胞死について、アルカリセンサーであるチャネルタンパク質TRPA1誘導性細胞死と耐性獲得メカニズムを明らかにすることである。これらのメカニズムを明らかにすることにより、TRPA1誘導性腫瘍細胞死の活性化手法と、耐性細胞除去薬の開発に必要な重要情報を得ることが可能となる。本研究の成果から、有効な治療法のないイヌ悪性黒色腫に対する新規治療法の開発が見込まれる。さらに、耐性獲得メカニズムを明らかにすることは、悪性黒色腫の治療後の再発を予測診断し、その診断に基づく再発予防策の開発についても期待できる。 イヌ悪性黒色腫細胞に対するpH環境の影響についてMTT assayにて検討したところ、アルカリ性環境で細胞死が生じることを発見した。さらに、イヌ悪性黒色腫細胞をアルカリ性環境で処理し、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウム染色を行い、フローサイトメトリー解析にてPI陽性細胞(死細胞)が増加することを明らかにした。阻害剤を用いて細胞死のタイプを検討したところ、これまでに知られているアポトーシス、ネクロトーシス、パイロトーシス、フェロトーシスなどの代表的な細胞死阻害剤では抑制されなかったことから、pH依存性の新しい細胞死タイプであることが示唆された。さらに、イヌ悪性黒色腫細胞で、アルカリセンサーチャネルタンパク質TRPA1の発現を検出した。TRPA1活性化剤を用いて検討したところ、正常培養条件下においてもイヌ悪性黒色腫細胞に細胞死を誘導する ことに成功した。さらに、阻害剤スクリーニングを行った結果、脂質代謝酵素の阻害剤によってTRPA1誘導性の細胞死が抑制されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画どおり、これまでに申請者らが開発した阻害剤スクリーニング手法を応用し、アルカリ依存性細胞死を制御する細胞内シグナル伝達を明らかにできた。新しい細胞死のタイプについても阻害剤スクリーニングに行うことで制御分子を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
新規の細胞死メカニズムの解明のため、上流の経路についてカルシウムシグナルとヒストンアセチル化の相互作用について解析を進める予定である。また、イヌ悪性黒色腫細胞はカルシウムフリーの条件で細胞死耐性を獲得することを発見した。今後の研究の推進方策として、この耐性獲得メカニズムを明らかにする。具体的には、カルシウムシグナルを制御する経路のターゲット(ホスホリパーゼCおよびホスホリパーゼDなど)に対するsiRNAを用いてノックダウン実験を行い、本経路抑制による薬剤耐性、細胞増殖、遊走能、ヒストン修飾の状態についての影響を検討する。さらに、ヒストンアセチル化活性化剤投与により、実験的に誘導したエピジェネティック状態で発現した耐性細胞を非耐性細胞へとリプログラミングすることで、薬剤への感受性を回復させ、耐性獲得を抑制させる方法を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度想定される研究遂行範囲より進捗したため、当該年度の物品費に残額が生じた。また、旅費については、発表学会がオンライン形式であったことから、費用を計上しなかったため、残額が生じた。次年度使用額は、次年度分の配分額と合わせて物品費(プラスチック製品や試薬などの消耗品)として使用する計画である。
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