2023 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of nociceptive channels as therapeutic targets for pain
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22K06001
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
太田 利男 鳥取大学, 農学部, 教授 (20176895)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、侵害受容体として重要な役割を果たす一過性受容体電位(TRP)チャネルの制御メカニズムを明らかにし、病態痛に対する疼痛制御法や新規鎮痛薬候補となる化合物を探索することである。本年度は、植物由来精油成分である酢酸リナリルに着目し、この化合物が侵害受容性TRPチャネルに与える影響を、マウスから単離した知覚神経細胞およびTRPA1チャネル遺伝子を導入した株化細胞を用いて検討した。チャネル活性は、蛍光Ca指示薬を用いた単一細胞イメージング法およびホールセルパッチクランプ法により解析した。その結果、酢酸リナリルはTRPA1遺伝子発現細胞において、炎症時に産生されるプロスタノイド(PGJ2)による細胞内Ca濃度の増加反応およびチャネル電流を可逆的に抑制した。同様の抑制作用はマウス知覚神経細胞においても認められたことから、インビトロの細胞系において酢酸リナリルがTRPA1チャネルを抑制することが明らかになった。次に、この抑制作用がマウス個体でも見られるか否かを検討した。マウスへのPGJ2投与により疼痛行動が誘発され、この行動はTRPA1遺伝子欠損マウスでは有意に減弱していたことから、PGJ2によるTRPA1チャネル活性を介した疼痛反応が生じることを確認した。このPGJ2による疼痛反応は酢酸リナリルの前処置により有意に抑制された。以上の成績から、酢酸リナリルによる鎮痛作用には侵害受容性TRPA1チャネルの抑制作用が関与していることが示唆された。したがって、酢酸リナリルはTRPA1を標的とする新規鎮痛薬開発のためのリード化合物として有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疼痛受容に重要な役割を果たしているイオンチャネルであるTRPA1に対して、酢酸リナリルが抑制作用を示すことを明らかに出来たことから、本化合物がTRPA1をターゲットとする新規鎮痛薬の開発のためのリード化合物として有用である可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
侵害受容チャネルに対して作用を及ぼす種々の化合物の同定とその作用機序について、インビトロ評価系に加えて、動物個体を用いたインビボ評価系を用いて解析する。
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