2022 Fiscal Year Research-status Report
家畜病原体媒介マダニにおける二酸化炭素及び温度認識システムの解明
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22K06011
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
山地 佳代子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40554275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マダニ / 吸血性節足動物 / 標的認識システム / 衛生動物学 / ハラー氏器官 |
Outline of Annual Research Achievements |
マダニは外部寄生虫の中で、家畜に最も甚大な被害をもたらす。マダニは、吸血に適した宿主動物が接近するまで草むらで待機し、動物が放散する僅かな二酸化炭素や熱、匂いを認識することで宿主へ接近する。したがって、マダニの二酸化炭素および熱認識を中心とした標的認識システムの阻害は、動物やヒトへの付着を未然に防ぎ、効果的な感染防御に直結するが、マダニの標的認識行動システムはほとんど知られていない。そこで本研究課題では、マダニの誘引要素の一つである二酸化炭素に着目し、二酸化炭素認識を支える分子基盤の解明を目指している。 マダニは形態学的・電気生理学的研究から第一脚にあるハラー氏器官に二酸化炭素を認識する受容体細胞の存在が示唆されているが、二酸化炭素受容体や認識機序については未解明である。そこで、二酸化炭素濃度の刺激および変化に対するマダニの行動を、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)を用いて解析した。マダニの行動解析にあたっては、シャーレに入れたマダニを行動解析装置内にてビデオ録画した後、個体ごとの運動量および速度をビデオトラッキングシステムにて評価した。活動期のフタトゲチマダニの成ダニに対し、二酸化炭素濃度を急激に変化させると、その運動量が顕著に増加した。一方、非活動期の成ダニは二酸化炭素濃度変化に伴う運動量の変動は認められなかった。そこで活動期と非活動期のマダニ第一脚で発現変動する遺伝子群を次世代シーケンスにより網羅的に解析した。その結果、他の生物で二酸化炭素認識への関与が報告されている味覚受容体(gustatory receptor:Gr)のホモログが同定され、これをHlGr1-35(H. longicornis Gr)とした。現在、HlGr1-35について機能解析を進めることで、二酸化炭素認識を支える分子基盤解明に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マダニは動物から獲得した血液を唯一の栄養源としており、吸血時にヒトや家畜に病原体を媒介することで知られている。したがって、病原体伝播の根源であり、吸血行動の基盤である標的認識システムの解明は新しいマダニ防御法の開発基盤構築に資すると期待される。本年度はマダニの誘引要素の一つである二酸化炭素に着目し、マダニ生活環における活動期(二酸化炭素濃度変化に対し運動量が増加する時期)と非活動期(運動量に変化が認められない時期)を行動解析システムにて明らかにし、活動期と非活動期のマダニ第一脚(二酸化炭素認識の責任器官と推測される)で発現変動する遺伝子群を次世代シーケンス解析にて明らかにした。その結果、他の生物で二酸化炭素受容への関与が報告されている味覚受容体のホモログ遺伝子を複数同定することに成功したことから、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
フタトゲチマダニ各組織におけるHlGr1-35の発現パターンと局在等を解析することで、ハラー氏器官特異的発現分子を絞り、機能解析を実施することで、二酸化炭素認識システムへの寄与解明に努める。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた実験の一部が遅れが発生し、翌年度実施となったため。
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Research Products
(1 results)