2022 Fiscal Year Research-status Report
牛の子宮疾患バイオマーカーの評価に基づく子宮生化学検査の基盤構築
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22K06023
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田中 知己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20272643)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 子宮生化学検査 / C反応性蛋白 / プロスタグランジンF2α代謝産物 / 子宮洗浄 / 子宮頸腟粘液 / ジチオトレイトール / 牛 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験1: 炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)および3,14-dihydro-15-keto-Prostaglandin F2α(PGFM)の子宮生化学検査としての有用性を検証するため、細胞学的検査である好中球出現割合(PMN割合)をリファレンスとし、実験的炎症誘発モデルを用いて解析を行った。臨床現場で多用され子宮内への刺激により炎症を引き起こすことが知られているヨード剤を活用した。ホルスタイン種乳用牛(n=14)の発情周期の黄体期にヨード剤あるいは溶媒を子宮内に投与し、投与後1日において子宮洗浄液を回収した。回収液中のCRP、PGFMの濃度変化およびPMN割合を解析した。その結果、CRPおよびPMN割合はヨード剤投与群において有意に高く、PGFM濃度に両群間で有意な差は認められなかった。子宮洗浄液中のCRPは急性の炎症過程において敏感に反応する子宮内炎症マーカーであることが示された。
実験2: 獣医臨床現場において牛の子宮生化学検査検体として子宮頸腟粘液(CVM)を活用する手法を検証した。CVMは粘稠性が高いため、測定誤差が生じやすい欠点がある。これを解消するため、過去の報告を参考にジチオトレイトールを用いた前処理法の活用を検証したところ、CVM検体からCRPおよびPGFMが検出され、CVMの子宮生化学検査材料としての有用性が示された。この成績を基盤として、ホルスタイン種乳用牛(n=8)の発情周期の黄体期にヨード剤あるいは溶媒を投与し、投与後1日にCVMを回収し、CRPおよびPGFM濃度の変化を解析した。その結果、ヨード剤投与後CVM中のCRP濃度は溶媒投与群に比べて有意に増加し、PGFM濃度は減少する傾向が観察された。実験1の成績を考えあわせると、子宮疾患診断を行う上での補助検査として、CVMが子宮生化学検査の検体として有用である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的どおり炎症時における子宮内バイオマーカーの有用性を実験的に確認することができ、また、子宮洗浄検体に加え、臨床現場での応用性に優れた子宮頸管粘液を子宮生化学検査における有用な検体として活用できる手法の目処がたったため。さらに、この結果を国際学術雑誌において公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に確立した手法を用いて、牛の様々な生殖ステージにおける子宮頸管粘液検体の子宮生化学検査としての有用性を検証する。具体的には発情周期や人工授精時における子宮内環境の評価を行い、子宮頸管粘液検体中の子宮生化学所見と受胎性の関係を調査する。また、新たな試みとして、牛の子宮深部における局所的機能評価技術の確立を行い、子宮生化学検査を高度化するための基盤的な技術確立を目指す。
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Causes of Carryover |
検査材料の処理方法の検証および測定技術の確立に時間を要し、未解析の検体を解析するための経費が年度末の時点で執行できなかったため。これまで収集した検体を用いて、検体中に含まれることが想定される複数のバイオマーカーを今年度に測定する予定であり、測定に要する試薬の購入に経費がかかることおよび使用する動物の頭数の増加が見込まれるため、動物の維持費用、消耗品の購入に加えて成果の公表のための旅費として翌年度分として請求した助成金と合わせ、執行する計画である。
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