2023 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経系の炎症制御における脳硬膜の関与についての実験病理学的研究
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22K06026
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
寸田 祐嗣 鳥取大学, 農学部, 准教授 (20451403)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中枢神経系 / EAE / 髄膜 / 硬膜 / 炎症 / 好中球 / リンパ球 / 獣医病理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中枢神経系の炎症における髄膜(硬膜、くも膜、軟膜)の関与を明らかにすることが目的である。当該年度は、これまでに確立した方法により、EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)を誘導したマウスを用いて、好中球の関与について検討した。 まず、髄鞘構成成分であるプロテオリピッドタンパク質由来のペプチドを抗原として投与したマウスの髄膜内に好中球が浸潤すること、血漿中の好中球エラスターゼ(NE)活性が上昇すること、が明らかになった。次に、EAE誘導処置したマウスにNE阻害剤を投与したところ、急性期のマウスの体重減少や臨床症状が軽減した。また、発症後回復する傾向も増加した。脳実質病変には多数の炎症性細胞浸潤がみられ、CD3陽性のTリンパ球や活性化カスパーゼ3陽性のアポトーシス細胞が混在していたが、それらはNE阻害剤投与により減少した。また髄膜、特に硬膜の炎症性細胞浸潤もNE阻害剤投与により軽減した。 経時的な推移を比較した結果、硬膜における炎症性細胞浸潤が最も強くなる時期は、脳実質炎の極期よりも先行していたことから、硬膜炎が脳炎の起点のひとつになる可能性が推察された。また、好中球の機能阻害は脳脊髄炎の抑制に効果的であること、その機序として、自己反応性Tリンパ球の活性化抑制が関与する可能性を考察した。 髄膜に浸潤する炎症性細胞を標的とした脳脊髄炎の予防・治療は、脳脊髄実質を標的とするよりも、薬物送達の点において有利である。そのため、さらに詳細な機序を検討することによって、MS(多発性硬化症)等の脳脊髄炎の予防・治療に応用される基礎研究成果になり得ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究成果として、硬膜における好中球の浸潤が特徴であることを見出し、その後、現在までに好中球の役割について明らかにするために、上記した阻害剤投与の実験を実施した。阻害剤投与条件の詳細(投与量や頻度など)の検討に時間を要したが、当初の計画通りに研究を実施し、解析を行うことができた。以上の理由により、当該年度までの本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の予定として、以下の2点を計画し、既に予備的解析をはじめている。 1点目は髄膜内に浸潤するCD3陽性細胞の詳細は明らかにすることである。CD3はTリンパ球についての汎用マーカーであり、より具体的で詳細なリンパ球の種類や役割は不明である。そのため、髄膜、特に硬膜内に浸潤するリンパ球について、特にTh1細胞、Th17細胞、細胞傷害性活性の有無に注目して検討を進めている。 2点目は脊髄髄膜の解析である。これまで大脳頭頂部の硬膜静脈洞周囲の硬膜に注目して解析してきたが、脊髄硬膜についての病理組織学的変化については未検討であり、詳細不明である。そのため、脊髄全長を網羅するように、縦断標本を作成して、解析を進めている。 以上の方策により研究課題を進捗し、中枢神経系の炎症における髄膜(硬膜、くも膜、軟膜)の関与を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
物品費のうち、一般消耗品の節約および実験動物使用数を可能な範囲で削減したことによって、約5万円の次年度使用額が生じたが、研究進捗には影響はなかった。 当該助成金は、翌年度分として請求した当初助成金と合わせて、翌年度の研究課題遂行のための物品費(一般消耗品経費)として使用する予定である。金額は繰越金額として妥当な範囲であり、翌年度の研究計画ならびにその進捗には影響がない。
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Research Products
(2 results)