2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a treatment for rabies based on metabolomic analysis
Project/Area Number |
22K06029
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山田 健太郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70458280)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 狂犬病 / メタボローム / キヌレニン経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、未だ治療法のない狂犬病について、狂犬病ウイルスの弱毒化機構を解明することで、その治療法の確立を目指す。すなわち、弱毒株が感染した場合に宿主から排除されるメカニズムを解明し、それを野外株(強毒株)感染において再現させることで、狂犬病の治療が可能か検討を行うものである。以前に、狂犬病ウイルス野外株(1088株)G蛋白質においてL38R変異がマウス末梢感染において弱毒化をもたらし、変異ウイルスは脳に至るも排除されることを見出しており、感染マウス血清の比較メタボローム解析により、変異株感染では野生株感染に比べて、トリプトファンの代謝経路であるキヌレニン経路の代謝産物の一つであるキノリン酸の有意な上昇が確認された。 そこで今年度は、保存されている感染マウス血清(ウイルス接種5-6日後)を用いて、キヌレニン経路においてどの分子がL38R変異株感染で増加しているか、ImmuSmol社のELISAキット(L-トリプトファン、L-キヌレニン、キヌレン酸、及びキノリン酸)により調べた。残余血清に限りがあったため、血清は10倍希釈して各ELISAを実施した。血中トリプトファン(Trp)濃度については野生株(WT)・変異株(L38R)感染で顕著な変動は認められなかった。一方、そのキヌレニン経路の代謝産物であるL-キヌレニン(KYN)、キヌレン酸(KYNA)、及びキノリン酸(QA)の血中濃度については、希釈の影響により検出限界以下を示したサンプルがいくらかあったものの、ウイルス接種6日後(6 dpi)において、変異株感染で上昇する傾向が確認された。以上のことから、メタボローム解析だけでなくELISAによってもL38R変異株感染マウスにおいてキヌレニン経路の代謝産物の血中レベルの上昇が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は宮崎大学で感染実験を行う予定であったが、ABSL3の稼働が2023年に入ってからであったため、予定より進行が遅れている。このため、以前に在籍していた研究室で実験を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
組換え狂犬病ウイルス株を宮崎大学に移送して研究継続する。移送にあたり法令を遵守する(感染症法、カルタヘナ法)。R5年度は計画に沿って下記のように進める。 1. 弱毒株感染マウスにおけるキヌレニン経路に関する発現解析: 感染マウスの各組織等におけるキヌレニン経路に関する酵素遺伝子・代謝産物(中間物質も含む)について発現解析をRT-qPCRやELISAにより行い、治療候補となる分子の絞り込みを行う。 2. L38R変異株感染マウスにおける脳内トランスクリプトーム解析: RNA-seq等による網羅的mRNA発現解析を実施し、弱毒株観戦における抗ウイルス状態に関わると想定される脳内発現遺伝子を特定する。 3. IDO1阻害剤投与実験: 1-MT(1-methyltryptophan)はL-トリプトファンをL-キヌレニンに代謝させるIDO1酵素の阻害剤で、in vivoでの有効性も確認されている。そこで、L38R変異株感染マウスに1-MT投与を行い、致死的感染が起こるようになるか検討する。もしそれ が起これば、キヌレニン経路の誘導が弱毒性状に関与すること判明するが、起こらない場合にはIDO1酵素に非依存的なキノリン酸産生経路(トリプトファン酸素添加酵素、TDOなど)が関与することが推測され、この遺伝子の発現解析も進める。 4. 代謝産物投与による再現実験: 上記1で見出された代謝産物についてマウスへの投与実験を行い、弱毒株感染マウスと同様の遺伝子変動が認められるか検証する。
|
Causes of Carryover |
宮崎大学のABSL3の稼働開始が2023年になったため、研究計画どおりに進めることができなかった。組換え狂犬病ウイルスを移動させ、R5年度はR4及びR5年度の計画に沿って研究を遂行したい。
|