2022 Fiscal Year Research-status Report
人工染色体技術を活用した脆弱X症候群関連染色体脆弱部位の機能解析とモデル系の構築
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22K06085
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中山 祐二 鳥取大学, 研究推進機構, 助教 (40432603)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 染色体工学 / 脆弱X症候群 / トリプレットリピート病 |
Outline of Annual Research Achievements |
脆弱X症候群(FXS: Fragile X syndrome)は最も頻度の高い家族性のX連鎖性知的障害であり、自閉症スペクトラム症の遺伝的モデルとしても注目されているトリプレットリピート病である。脆弱X症候群では、責任遺伝子FMR1の5’非翻訳領域に存在するCGGリピートが、ある長さを閾値に母性伝播時に一気に伸長する結果、FMR1遺伝子の発現が抑制されることで発症する。この一連のクロマチン動態がFXSの発症の根本的病因(CGGリピート動態と呼ぶ)である。しかし、CGGリピート動態を正確に再現できる解析系が現存しないため、CGGリピート動態のメカニズムや関わる分子などには不明な点が多い。CGGリピート動態の再現系構築のためには、染色体脆弱部位と呼ばれる、CGGリピートのような単純リピート配列をコアとして含み、実際にトリプレットリピート病の発症に関わる領域をそのまま実験室レベルで扱えるようにする必要がある。そして、もともと不安定な要素を持つ染色体脆弱部位を安定に取り扱える資材として整備し、かつトリプレットリピート病のような世代間解析を実現するためには、染色体導入動物作製までも可能である染色体医工学技術が最適であると考えた。そこで本研究では染色体工学を活用して、CGGリピートをコアとするFXSに関わる染色体脆弱部位を機能的ヒト染色体領域としてマウス人工染色体に搭載し(Fra-MACの構築)、Fra-MACをin vitroおよびin vivoの系に導入することでCGGリピート動態のメカニズムを包括的に明らかにするためのモデル系の作製を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、脆弱X症候群の保因者由来のX染色体から、CGGリピート領域ならびにFMR1遺伝子座を包括する領域を本疾患に関わる「FXS脆弱部位」と定義し、この領域をマウス人工染色体に搭載する工程を進めている。マウス人工染色体へのFXS脆弱部位の搭載には、もともとの保因者由来のX染色体の改変と部位特異的組換えを利用する。染色体改変は続く部位特異的組換えのための事前準備を指し、部位特異的組換えに必要な組換え配列の挿入やFXS脆弱部位下流の不要な領域の削除など3工程がある。これらは全てCRISPR/Cas9系を用いて行い、一方の部位特異的組換えによる搭載にはCre/loxP系を利用し、すべてチャイニーズハムスターの細胞(CHO)内で実施している。初年度は染色体の改変を完了して、部位特異的組換えによるFXS脆弱部位の搭載へと工程を進めたが、搭載に成功したと思われる結果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は脆弱部位を搭載した人工染色体が構築されなければ研究計画を進めることが難しいため、来年度からもFra-MACの構築に注力していく予定である。この状況に対して、1)改変に関わるX染色体そのものを見直しつつ、2)部位特異的組換え誘導の別法の試行を組合わせて再試行している。1)については、使用している保因者由来のX染色体について、何らかの構造異常等の問題があると考え、別の保因者由来のX染色体のCHO細胞へのクローニングすることにも踏み切っている。また現資材を利用して、2)として、Cre発現ベクターの導入方法や組換えCreタンパク質の利用など、組換え効率の向上を目指して種々の再試行を続けている。さらに、3)として、ロードマップ内では最終年度にかけて行う予定であったより長い染色体領域の搭載(TAD包括Fra-MACの構築)も作業工程としては同じであり、同時並行で進めることとした。
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Causes of Carryover |
本事業の研究計画として、2年目以降は実験の性質から予算を多く計上した。しかし初年度計画を完了することができず、必要な経費が変更となり、次年度使用にすることにした。使用計画としては、引き続き次年度もFra-MACの構築に注力していく予定であり、今後の研究の推進方策でも述べているが、当初の本研究のロードマップ内の(A)および(D)を集中的に進める予定である。
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Research Products
(10 results)