2022 Fiscal Year Research-status Report
Biochemical study about the regulatory mechanism for mitochondrial genome replication and maintenance
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22K06087
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加生 和寿 九州大学, 薬学研究院, 助教 (90726019)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / mtDNA / DNA複製 / 試験管内再構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物において、ミトコンドリアは細胞活動に必要なエネルギーであるATPの産生を担う細胞内小器官である。ミトコンドリア独自のゲノムmtDNAは1細胞当たり数千コピー存在し、ATP産生に必須の電子伝達系の酵素群を発現する。従ってmtDNAのコピー数や遺伝情報の安定維持は健康な生命活動において重要である。mtDNA複製は核DNA複製装置と異なる因子で構成され、リーディング鎖-ラギング鎖共役型あるいは非共役型の複製開始機構が適切に使い分けられる(Yasukawa and Kang, 2018)。このようにmtDNA複製の全容が明らかにありつつある一方で、mtDNA複製モード(リーディング鎖-ラギング鎖共役型)やコピー数の制御機構は未解明である。本研究ではmtDNA複製の試験管内解析系を新たに構築し、その詳細なメカニズムや制御機構の解明を目指す。申請者は研究計画に沿って試験管内でのmtDNA複製反応を検討し、現在までにミトコンドリア由来蛋白質抽出液と精製mtDNAとを混ぜることにより部分的にmtDNA複製反応を誘導させることに成功した(九州大学理学研究院 高橋 達郎 教授との共同研究を含む)。一方で、試験管内mtDNA複製系には複製開始の特異性やヌクレアーゼ活性が高いといった問題点が残っており、今後もさらなる検討を要する。加えて、第二の計画である精製ミトコンドリア画分を用いたmtDNAコピー数解析系の構築を進めている。今後も研究計画に沿って試験管内で精製タンパク質をミトコンドリア内に移行させる実験を試みることでmtDNA複製制御機構の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. ミトコンドリア抽出液を用いたmtDNA複製開始の分子機構解析 現在までに申請者は、過去の報告(Dunon-Buteau et al., 1987)に倣ってミトコンドリア画分の精製法と抽出液の調製法を確立し、ミトコンドリア由来蛋白質とmtDNAとを混ぜることにより部分的に複製反応を誘導させることに成功している(九州大学理学研究院 高橋 達郎 教授との共同研究を含む)。一方で、mtDNA複製開始部位など種々の変異体解析の結果についても検討した結果、現状の試験管内mtDNA複製系では本来の複製開始部位からの特異的な複製開始は検出されなかった。よって現時点では複製産物の解析や二次元ゲル電気泳動法による複製中間体の解析は困難であり、さらなる条件検討が必要である。 2. 精製ミトコンドリア画分を用いたmtDNAコピー数制御の解析 上記の通りミトコンドリア抽出液を用いた試験管内mtDNA複製系の確立が困難であることから、申請者は第二の計画である精製ミトコンドリア画分を用いたmtDNAコピー数解析についても進めた。現在までに、精製ミトコンドリアが複製活性を有し、mtDNAコピー数も時間経過に依存して増加することが確認された。このように申請時には想定していなかったトラブルに苦慮したが、一方で第二の計画で一定の成果が得られたことから概ね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は精製ミトコンドリア画分を用いたmtDNA複製、コピー数解析系を用いたmtDNA複製の制御機構解析を中心に研究を展開する。mtDNA複製装置(TWINKLEヘリカーゼ、一本鎖DNA結合因子mtSSBなど)、及び複製モードの制御に機能することが示唆された既知因子(PrimPol DNAプライマーゼ/ポリメラーゼなど)についてmtDNA複製への影響を検証する。これら候補因子を精製ミトコンドリア内に移行させる実験を通じてmtDNA複製制御の基盤的原理の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
少額消耗品に使用するため次年度に持ち越した
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