2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞変性過程における統合的ストレス応答活性化の分子基盤
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22K06118
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
柏木 一宏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60732980)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 翻訳調節 / 統合的ストレス応答 / クライオ電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合的ストレス応答(ISR)経路は細胞がストレスに対処・適応するするための翻訳調節機構であり、すべての真核生物に保存された機構である。しかしながら神経変性疾患においては、ISR経路の慢性的活性化が神経細胞喪失の一因となっていることが知られている。そのため、疾患初期段階における強力かつ一過的なISRの活性化によるストレス因子の除去、もしくは疾患後期段階における慢性的ISRの抑制による細胞死の抑制など、ISRの調節は神経変性疾患全般に対して新たな治療戦略となる可能性を秘めている。 HRIは哺乳類においてISRを誘導する因子の1つであり、細胞質基質への異常なタンパク質凝集体の蓄積やミトコンドリアの機能不全などのストレスに応答して活性化されることが近年相次いで報告されている。異常な凝集体やミトコンドリア機能の破綻はどちらも神経変性疾患で広くみられる現象であるため、HRIはISRを標的とした治療戦略において重要な因子となると考えられるが、その立体構造や活性化の分子基盤に関してはほとんど情報が得られていないのが現状である。 本研究では、HRIやその活性化に関与する因子群との複合体を調製し、クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造解析によって、HRIの活性化や制御の分子基盤を理解することを目指している。初年度である本年度は、構造解析の標的となる因子群の精製法の確立に焦点を当てて取り組み、大腸菌組み換え発現系による精製法を確立した。またHRIに関してはリン酸化活性を有する機能的タンパク質であることが確認され、初歩的な電子顕微鏡画像を得ることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造解析の標的としていた因子群について、クローニングおよび大腸菌発現系での精製法が確立された。HRIに関しては自己リン酸化能やeIF2に対するリン酸化活性を有することが確認され、クライオ電子顕微鏡解析により初歩的な粒子画像が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、HRI関連複合体の調製法を確立し、クライオ電子顕微鏡解析を試みる。
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Causes of Carryover |
タンパク質精製条件の検討等が順調に進行したため消耗品費用が抑えられたことなどにより、次年度使用額が生じた。翌年度以降のクライオ電顕用消耗品費に充てる予定である。
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