2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K06129
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上川 泰直 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (40770459)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 核膜ストレス / SIL1 / NLS |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の核を覆う核膜は二つの脂質二重膜から成り、最近の研究から様々なストレスにより損傷を受けることが明らかとなっている。本研究では、新規核膜ストレス応答因子の同定とその機能解明を、プロテオーム解析などの網羅的手法を取り入れ遂行することである。本年度は申請者らが見出した核膜ストレス応答因子・OASISをベイトとした近接依存性ビオチン標識を行い、ストレプトアビジンにより近傍に局在するタンパク質を精製した後、質量分析によるショットガン解析を行った。その結果、核膜損傷部位に集積する可能性のある候補因子を多数同定した。さらに、その中のいくつかのタンパク質関して蛍光タンパク質との融合タンパク質として発現させるためのベクターを作成し、その局在を明らかにするための準備を進めた。現在までに、核膜ストレスの主要な原因となる細胞の移動に必須の因子として報告されているSIL1 Nucleotide Exchange Factor (SIL1)に関して、核ラミナの消失した核膜損傷部位に集積することを確認している。これらの因子が核膜ストレス応答に涵養することを明らかとするため、核膜損傷のレポーターとして機能するNLSを付与した蛍光タンパク質を安定発現する細胞株を複数のがん細胞株から樹立した。現在、SIL1が核膜ストレスに関連した機能を有するかどうかを明らかにするため、RNAiによりその発現を抑制し、NLSにより核膜の損傷と修復に及ぼす影響の評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績にも記述したように、プロテオームを用いた解析により、核膜ストレス応答に関与する可能性のある候補因子を多数見出すことに成功している。特に、核膜損傷部位への集積を確認したSIL1は核膜ストレスの主要な要因となる細胞の移動に必須の因子であることから、本実験系が核膜ストレス応答因子の探索に有効であることが強く示唆される。また、SIL1はマリネスコ-シェーグレン症候群の現遺伝子であることが知られており、核膜ストレス応答を介した機能が疾患発症に関与する可能性が示唆され、今後の研究によりその解明が期待される。。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテオーム解析により得られた候補因子について、実際に核膜損傷部位へ集積するかを確認するため、蛍光タンパク質との融合タンパク質として発現させ、核膜損傷部位への局在が見られたものに関しては、核膜ストレス応答に関連した機能を検証する。具体的には、siRNAによるノックダウンや発現誘導可能な細胞株を樹立し、その機能解析を行う。核膜の修復過程に与える影響を直接評価するため、レーザー照射を用いて核膜の損傷を一過的に誘導し、その修復過程をlive imagingにより解析する。修復の評価には、核移行シグナルNLSや既知の核膜修復因子と蛍光タンパク質の融合タンパク質を用いる。同時に、核膜ストレスにより誘導されるDNA損傷や細胞死の誘導を定量的に解析する。以上の解析から、これらの因子が新規核膜ストレス応答因子として重要な生理的機能を有するかどうかを評価する。
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Causes of Carryover |
学会参加費等として計上していた旅費の使用が、on-line開催が未だ多かったため予定より少なかった。また、実験試薬の使用量が削減することが出来たため、消耗品費も当初予定額に達しなかった。差額に関しては次年度予定している論文掲載料が当初の想定よりも高額になる可能性が高いため、その補填に充てる計画である。
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