2023 Fiscal Year Research-status Report
「異種自己抗原」発現によるヒト特異的な慢性炎症状態のマウスモデル樹立とその解析
Project/Area Number |
22K06135
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
内藤 裕子 藤田医科大学, 医療科学部, 講師 (10456775)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シアル酸 / N-グリコリルノイラミン酸 / 異種自己抗原 / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病やがんなどに共通する基盤病態として、慢性炎症が注目されている。慢性炎症の要因の一つに食品由来成分が考えられるが、ヒトを用いた実験が不可能であることから科学的に証明されている例はない。我々は、ヒトでは生合成されない動物由来のシアル酸、Neu5Gcに着目した。Neu5Gcは食品から体内に取り込まれ、異種自己抗原として発現する。一方で、ヒトに本来存在しないNeu5Gcは免疫原性を持ち、ヒトの体内には抗Neu5Gc抗体が存在する。つまり、ヒトでは抗体と抗原が同時に存在することになり、これがヒト特異的な慢性炎症状態を誘導し、様々な疾患の病態に関与すると考えられる。炎症状態の各種病態への影響を実験的に証明するためには、適切な動物モデルが必要となる。そこで本研究では、研究代表者らが作製したヒト型シアル酸発現マウス(CMAH KOマウス)を用いてヒト特異的な慢性炎症状態を再現するマウスを作製し、ヒト疾患研究の基盤となる動物モデル系の確立を目指している。マウスモデル系の確立にあたっては、マウスの寿命が短いこと、実験動物を用いたモデル系では個体差が少ない方が望ましいことから、Neu5Gcの蓄積速度を高めることと、Neu5Gcに特異的で個体差の少ない免疫応答を誘導することが克服すべき課題である。予備的研究において、化合物の投与によりNeu5Gcを心臓の血管内皮に発現させることに成功したことから、本研究では、マウスに投与する炎症誘導性の抗Neu5Gモノクローナル抗体の作製を試みた。免疫に用いる抗原や免疫を行うマウスの遺伝子型など、免疫方法を工夫することで、これまでに特異性等の異なる複数の抗Neu5Gcモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの樹立に成功した。さらに、これらのモノクローナル抗体の可変領域の塩基配列の解析やエフェクター機能の検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイブリドーマを作製する際に用いるフュージョンパートナーや免疫に用いるマウスの系統を工夫することで、Neu5Gc含有糖鎖を異なる親和性・特異性で認識する抗体を産生する複数のハイブリドーマを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、抗体のエフェクター機能の効果的な検証方法を検討するとともに、これまでに得られた抗Neu5Gcモノクローナル抗体のエフェクター機能の改変を試みている。期待するエフェクター機能を持つ抗Neu5Gc抗体が得られれば、Neu5Gcの前駆体となる化合物の投与と抗Neu5Gc抗体の投与を組み合わせ、平易で安定したヒト型慢性炎症モデルとなるマウス実験系を確立する。
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Causes of Carryover |
購入を検討していた試薬の購入を見送ったため、次年度への繰越が生じた。
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