2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞成長を司るmTORC1キナーゼ複合体の活性制御機構の解明
Project/Area Number |
22K06145
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
両角 佑一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80571439)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ラパマイシン / mTORC1 / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
栄養に応答し細胞成長や代謝を制御するmTORC1は、がんなどの疾病に加え、老化・寿命と密接に関わることが知られている。本研究では、遺伝学的解析が容易で哺乳類細胞と同様のmTORC1経路をもつ分裂酵母をモデル系として、新規mTORC1制御因子を同定しその機能を明らかにすることで、酵母からヒトまで保存されたmTORC1の活性制御メカニズムの理解を目指す。本年度は、mTORC1経路に関わる新規因子候補として同定したHhp1キナーゼに着目し、研究を行った。まず、hhp1遺伝子破壊株において、mTORC1のキナーゼ活性が亢進していることから、Hhp1はmTOTC1の抑制因子として機能することが明らかとなった。また、その機能はHhp1のあるアミノ酸置換によって、向上することが見出された。加えて、Hhp1のキナーゼ活性がmTORC1の抑制に必須であることを明らかにした。共免疫沈降法によりmTORC1とHhp1の相互作用が検出されたことから、Hhp1がmTORC1を直接リン酸化することでその機能を抑制する可能性が示唆された。 Hhp1に加えて、mTORC1経路の新規関連因子として同定したPsr1およびSPBP4H10.16cについても進めた。psrおよびSPBP4H10.16cの遺伝子破壊により、mTORC1の構成因子であるMip1変異による分裂酵母のラパマイシン感受性低下が観察されるが、それぞれの遺伝子破壊と二重遺伝子破壊でそのラパマイシン感受性に変化は見られたかった。このことから、両者は協調して機能する可能性が示唆されたので、共免疫沈降法によりPsr1とSPBP4H10.16cの相互作用を確認した。その結果、両者の相互作用が検出されたことから、Psr1とSPBP4H10.16cは複合体として機能することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hhp1がどのようにmTORC1の抑制因子として機能することを見出し、そのメカニズムについても迫ることができた。加えて、Psr1とSPBP4H10.16cが複合体として機能することを示唆するデータも得られた。当初の計画通りに研究が進んでいるため、概ね順調に進展していると判断した
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Strategy for Future Research Activity |
mTORC1は複数の制御サブユニットからなる複合体である。そこで、まずHhp1がmTORC1のどの制御サブユニットと相互作用するかを検討する。加えて、Hhp1のmTORC1抑制機能を亢進するアミノ酸置換が、mTORC1との相互作用に及ぼす影響を明らかにする。 一方で、Psr1とSPBP4H10.16cについては、まず両者の相互作用領域を特定する。また、それらの細胞内局在を解析すると同時に、相互作用因子を新たに探索することで、Psr1-SPBP4H10.16c複合体の機能を明らかにすることを目指す。
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