2022 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病の分子基盤:インスリン発現のON/OFFを司る転写因子複合体の解析
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22K06147
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
杉山 康憲 香川大学, 農学部, 准教授 (10632599)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / 糖毒性 / インスリン / 転写制御 / プロテインキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病における慢性的な高血糖の持続は糖毒性(膵臓beta細胞におけるインスリン分泌障害、インスリン発現抑制、アポトーシス)を引き起こし、糖尿病合併症を誘発することが問題となっている。特に、日本人の2型糖尿病患者においてはインスリン分泌障害およびインスリン発現抑制を引き起こす割合が多いことが知られているが、その分子メカニズムには不明な点が多く残されている。 我々は、糖毒性状態の膵臓beta細胞において、セリン/スレオニンキナーゼであるCandidate plasticity gene 16 (CPG16)が新規インスリン転写因子であるJun dimerization protein 2 (JDP2)をリン酸化することによってインスリン発現が負に制御されることを見出した。これまでにJDP2は他の転写因子と複合体を形成して、遺伝子発現の促進と抑制の両方に関与することが知られている。そのため、JDP2と他のインスリン転写因子の相互作用を解析した。その結果、JDP2はATF2によるインスリンプロモーターの活性化を抑制することを見出した。また、JDP2はC末端側のDNA結合領域であるロイシンジッパードメインを介してMafAと結合し、MafAによるインスリンプロモーターの活性化を相乗的に促進することを明らかとした。 さらに、JDP2はPDX-1とロイシンジッパードメインを介して結合し、膵臓beta細胞に共発現することによってインスリンプロモーター活性を相乗的に促進することを見出した。 これらより、JDP2は他のインスリン転写因子と直接相互作用することによって複合体を形成し、インスリン発現のONとOFFに寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2型糖尿病の糖毒性におけるインスリン発現のONとOFFを制御する転写因子複合体を解析することが本研究の目的である。我々が新規に見出したインスリン転写因子であるJDP2がATF2に加えMafAやPDX-1とロイシンジッパードメインを介して相互作用することを明らかとした。加えて、JDP2はATF2によるインスリンプロモーターの活性化を抑制し、MafAおよびPDX-1によるインスリンプロモーターの活性化を相乗的に促進するという、インスリン発現制御における2面性を持つことを見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究と同様にJDP2を介したインスリン発現抑制機構を解析していく。まず、JDP2とインスリン転写因子の複合体形成が2量体で行われるのか、それとも多量体形成するのかを解析する。また、JDP2と他のインスリン転写因子の複合体形成に対してJDP2のCPG16によるリン酸化の影響を調べる。さらに、糖毒性状態におけるJDP2と他のインスリン転写因子の相互作用およびインスリン発現に及ぼす影響を解析していく予定である。
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Research Products
(12 results)