2022 Fiscal Year Research-status Report
クライオ電子顕微鏡による細菌べん毛輸送中間複合体の構造解析
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22K06162
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木下 実紀 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任助教(常勤) (30790985)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細菌 / 電子顕微鏡 / 蛋白質 / 遺伝学 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
べん毛輸送ゲート複合体は、水素イオンの内向きの流れに共役してべん毛構成タンパク質を細胞外へ送り出す。これまでに、熱揺らぎの影響を強く受けるにもかかわらず、輸送ゲート複合体にはべん毛構成タンパク質が高速かつ高効率に細胞外方向へのみ拡散移動できるしくみが装備されているが、その実体は未だ謎である。本研究では、クライオ電子顕微鏡を用い、輸送ゲート複合体部分を高分解能構造解析することで、熱揺らぎをうまく取り入れながら高速・高効率に輸送基質タンパク質を輸送できる輸送チャネル複合体の構造基盤を解明することを目的とする。本年度の主な成果は以下に示す。 1.クライオ電子顕微鏡により、べん毛に組み込まれる前後でのFliPQR複合体の構造を明らかにした。組み込まれる前のFliPQR複合体は、可溶化の際に使用した界面活性剤をペプチドディスクに置き換えることで構造がより安定化され、今まで見えていなかったFliPのN末端領域の原子モデルを構築することができた。得られた構造に基づいて変異体解析を行なった結果、べん毛内部を貫通する輸送チャネルの形成メカニズムやMSリング内部にFliPQR複合体が組み込まれるしくみが明らかとなった。 2.クライオ集束イオンビーム走査型電子顕微鏡を用いて、観察に適したサルモネラの薄層を作製する為の様々な条件検討を行った。まずは、サルモネラ菌体溶液の濁度と凍結条件を検討し、グリッド全体を覆い、かつ厚さが十分な層を持つグリッドを再現良く作製できるようになった。さらに、薄層を削る際のプログラムを最適化する為、電圧、ドーズ、ビーム径を検討した結果、約20分で1つの薄層を150μmまで薄く削る方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クライオ電子顕微鏡により、べん毛に組み込まれる前後での FliPQR複合体の高分解能構造解析に成功するとともに、べん毛内部を貫通する輸送チャネルの形成メカニズムが明らかっとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
クライオ集束イオンビーム走査型電子顕微鏡を用いてサルモネラの凍結試料を薄く削ることが可能となったので、今後はクライオ電子線トモグラフィー法により機能状態にある輸送ゲート複合体の構造解析を実施する。
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