2022 Fiscal Year Research-status Report
生体膜上における膜結合タンパク質のマルチドメイン動態の解明
Project/Area Number |
22K06171
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 詠士 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (00779340)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膜結合タンパク質 / 細胞膜 / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内シグナル伝達に関与する膜結合タンパク質の多くは,膜に結合するためのリン脂質結合ドメインを含むいくつかの構造ドメインを有しているが,細胞膜上におけるそれらマルチ構造ドメインの挙動および脂質分子認識機構,タンパク質間相互作用は不明な点が多い.本研究ではマルチスケール分子動力学シミュレーションを行い,生体膜上での膜結合タンパク質の挙動や脂質認識,タンパク質同士の相互作用について分子レベルで明らかにすることを目的としている. 今年度は,AlphaFold によって推定したBtkタンパク質の全長立体構造モデルを使用し,タンパク質/水/イオン系の粗視化モデルを用いた分子動力学計算を行った.粗視化モデルとして使用したMartiniモデルは,タンパク質同士の相互作用が強すぎることが知られているため,タンパク質の大きさを表す慣性半径が実験値を再現するよう,粗視化モデルの相互作用パラメータの調整を行った.次に調整した相互作用パラメータを用いて,タンパク質/生体膜/水/イオン系の粗視化分子動力学計算を行った.シグナル伝達に関与する脂質分子であるホスホイノシタイドの1種(PIP3)が数%含まれるPOPC/POPS膜を使用し,タンパク質とPIP3の相互作用を解析した. また,粗視化分子動力学計算よりも大きな時空間スケールでの不均一な生体膜上でのタンパク質挙動を可視化するためのメゾスケールシミュレーション手法の開発を行った.飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の脂質分子の混在により秩序液体相 (Lo相)と無秩序液体相(Ld相)への相分離した膜において,タンパク質の結合により場の相分離が変化するモデルの開発・検討を行った
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度計画していた研究項目について研究を実施したが,粗視化分子動力学計算に用いる力場の調整に時間がかかり,やや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,粗視化力場の調整と計画していた生体膜上でのタンパク質挙動の詳細な解析を行うとともに,メゾスケールシミュレーションモデルの検証および改良を行いたいと考えている.
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