2022 Fiscal Year Research-status Report
深層学習を用いた非コードゲノム配列のがんドライバー変異の探索
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22K06191
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鬼丸 洸 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (30787065)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がんゲノム / 非コード配列 / 体細胞変異 / 深層学習 / エピジェノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
がんはゲノムの変異を要因とする病気であり、変異が生物学的機能に与える影響を理解することが、がんの治療に重要である。本研究では、現在理解の進んでいない、がんゲノムの非コード領域のゲノム配列変異の生物学的意義を解明するために、深層学習を用いた非コードゲノム配列の解析により、がん化における新規ドライバー変異を探索するアルゴリズムの開発を行うことを目的とした。 本研究では、初期段階として、独自開発したゲノム配列を読み込む専用の畳み込みニューラルネットワーク(FRSS)を応用して、がんゲノムの非コード領域の体細胞変異が、エピジェノミックシグナルに及ぼす影響を予測する方法を検討した。がんゲノムとしては、TCGAの1072の乳がんゲノムについて、small nucleotide variants(SNVs)の情報を利用した。まず、テスト段階として、深層学習モデルをマウスの複数の正常組織、細胞株におけるCTCFのChIP-seqシグナルを用いて訓練した。がん細胞におけるSNVsの情報をゲノム配列に変換し、訓練したモデルを用いて、体細胞変異が入った癌ゲノムとコントロールとして体細胞変異が入っていないレファレンスゲノムに対して、CTCF結合領域の予測を行い、予測結果を比較した。 結果として、現在の手法から、体細胞変異に起因した、650箇所のCTCF結合領域の獲得と682箇所の欠失を予測することが出来た。GO解析により、これらの推定CTCF結合変動領域の近傍には、細胞間接着やコンタクト阻害、細胞密度検出など、細胞間相互作用に関わる遺伝子が多いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究機器の整備に予想より時間がかかり、深層学習モデルを構築する環境が整わなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、SNVsに起因するゲノム座標のズレの正確な補正方法の検討や、現在の手法のパイプライン化に加え、エピジェノミック因子の種類の拡大、がん腫の拡大により、より包括的な非コード配列変異におけるエピジェノミックシグナルの変動を予測することを目指したい。また、これらの予測されたシグナルの変動が、実際に起こりうるのか、関連遺伝子の転写制御に影響があるのかを、実験的に検証する方法を検討していきたい。
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