2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞外環境の機械的加工による接着斑メカノセンシング機構の解明
Project/Area Number |
22K06196
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 有香子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 講師 (90360619)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 微小管 / 接着斑 / メカノセンシング / 細胞外基質 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の細胞は、周囲の機械的刺激を感知して細胞内シグナル伝達を変動させることで、細胞運動や組織の形態形成などを制御する。この機械的刺激の知覚はメカノセンシング機構と定義され、外環境と内部構造を繋ぐ膜貫通型受容体インテグリン複合体(接着斑)の機能を必要とする。しかしこの高次構造体が、機械的刺激を感知するメカノセンサーとして作用する仕組みには不明な点が多い。本研究は、この接着斑メカノセンサーの作用機構と生理的意義の解明を目指し、申請者がこれまでに明らかにした「微小管による接着斑ターンオーバーの促進メカニズム」が、接着斑のメカノセンサー機能を制御する機構を体系的に解明する。 本年度は、RhoAの活性化因子であるGEF-H1が微小管を介して細胞内張力を制御するメカニズムについて注目し解析を行った。顕微鏡下での高解像度ライブイメージングにより、微小管、GEF-H1と、細胞内張力を司る因子群(RhoGTPases、アクチン、ミオシン分子、接着斑構成分子)についてどのような相関関係が見られるかを解析した。また、細胞外環境からの機械的刺激をコントロールするための実験系について検討した。その結果いくつかの細胞株において、硬軟度グラディエントを持った細胞外基質上で極性を持った細胞移動(デュロタキシス)が観察された。これらの細胞においてはメカノセンシング機構による細胞移動が誘導されていると考えられる。現在、デュロタキシスを起こしている細胞内での分子ダイナミクスを解析するため、高解像度ライブイメージングを試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に顕微鏡周辺機器のセットアップが完了し、微小管並びに関連因子群のダイナミクスを高解像度に観察できる系が確立できた。硬軟度のグラディエントを持った細胞外基質を利用した実験についても着手でき、メカノセンシングによる細胞移動が起こることを確認した。今後メカノセンシングと微小管・接着斑との分子関連性について明らかにしていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
メカノセンシング中の細胞における接着斑と微小管関連因子群のダイナミクスについて、顕微鏡イメージングと画像解析を進める。加えて、接着斑と微小管の相互作用に必要な分子群について機能阻害を行い、メカノセンシングへの影響について考察する。機械的刺激の空間パターンを人為的に操作する系についても更なる検討を試みる。細胞外基質を微細加工することで、様々な形の硬軟度グラディエントや、サイズ・形態の異なるマイクロパターンを作成する。また細胞外基質の機械的ストレッチにより時空間的な機械的刺激の制御を行う。これらの機械的刺激を与えた細胞における、接着斑と微小管関連因子群のダイナミクスについて検討する。また、GEF-H1が微小管を介して細胞内張力を制御するメカニズムを解明するため、細胞に薬剤やタンパク質の機能阻害、また機械的刺激を加え、細胞内微小管の性質変化を誘導した場合の細胞内張力変化とGEF-H1のダイナミクス変化について検討する。
|
Causes of Carryover |
今年度の助成金により顕微鏡周辺機器を購入でき、顕微鏡関連のセットアップをほぼ完了した。残額については繰越とし、細胞培養関連の消耗品として使用予定である。
|