2022 Fiscal Year Research-status Report
シヌクレイノパチーにおける細胞外αシヌクレインによる新規病変伝播機構の解明
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22K06206
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 太郎 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80304088)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / パーキンソン病 / αシヌクレイン / シヌクレイノパチー / スフィンゴシン1リン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病やレビー小体型認知症などのシヌクレイノパチーと呼ばれる疾患群において,細胞外αシヌクレインが病変の伝播を引き起こすという仮説が受け入れられているが,そのメカニズムは不明である。本研究では,細胞外αシヌクレインがスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体の脂質修飾を抑制するというオリジナルな知見をもとに,細胞内情報伝達の撹乱およびリソゾーム機能の障害が,神経細胞内でのαシヌクレイン凝集を導くという仮説のもとで実験を行っている。 申請書作成の段階では,神経細胞として培養細胞であるSH-SY5Y細胞を用いてきたが,神経分野の専門家とのディスカッションを経て,当該年度に初めて神経初代培養系を導入し,細胞外αシヌクレインの作用について検討を行った。その結果,これまでのところ細胞外αシヌクレインによる直接的な細胞毒性は確認できないものの,細胞外αシヌクレインは初代培養系で形成されたシナプス部位特異的に凝集・集積している可能性が初めて明らかとなった。シナプスは神経伝達物質を介して情報のやりとりが行われるとともに,様々な受容体やシグナル分子が集積していること,またタンパク質のパルミトイル化が重要な役割を果たしていることが知られており,今回の知見は極めて興味深い。 また最近では神経細胞周囲のグリア細胞,特にアストロサイトが神経保護的に,あるいは時には神経障害性に働くことが知られるようになり,神経変性疾患との関わりが注目されている。神経細胞とアストロサイトの共培養系に添加したαシヌクレインの局在,およびその細胞内情報伝達への影響について,現在検討を始めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,神経の初代培養系およびアストロサイトとの共培養系を用いた細胞外αシヌクレインの作用について検討を行い,一定の所見を得られつつある点では,順調に進捗していると言える。しかし申請時点での本研究の目的は,細胞外αシヌクレインによるタンパク質脂質修飾,特にパルミトイル化の抑制を網羅的に明らかにすることであった。この点について,神経細胞(SH-SY5Y細胞)中のタンパク質パルミトイル化を,クリックケミストリーの手法により網羅的に検討したところ,現在までのところ細胞外αシヌクレインによる抑制が見られていない。これが手法上の問題なのか,それとも実際にαシヌクレインが細胞内のタンパク質パルミトイル化を抑制することはなく,S1P受容体の場合に特異的な現象だったのかどうかについて検証が必要であると考えている。この点で,初代培養系での検討も重要となる。 一方で,αシヌクレインによる神経細胞内タンパク質のパルミトイル化が大幅に抑制されるようなことはないと確定した場合,すなわち当初の仮説が間違っていた場合でも,新たに導入した初代培養系,特に共培養系におけるαシヌクレインの作用について得られつつある知見をもとにした「細胞外αシヌクレインによる病変伝播機構の解明」は可能であり,その場合にはそちらに集中することになる。
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Strategy for Future Research Activity |
初代培養神経細胞の培養液に組換えαシヌクレインを添加して1日培養したところ,神経細胞上でのαシヌクレインの凝集・付着が確認されたが,特にシナプス近傍に集積していた。シナプスでは神経伝達が行われることはもちろん,種々の受容体やシグナル伝達分子が集積していること,さらにタンパク質のパルミトイル化がシナプス機能において重要な役割を果たしていることが報告されていることを考えると,今回の知見は極めて興味深い。これまでの検討ではプレシナプスとポストシナプスのマーカーとしてVGLUT1とNeurabin-IIを各々用いたが,具体的にどのようなシナプス周囲にαシヌクレインが集積するのかを今後検討する必要がある(いわゆるA, B, C, Dシナプスのどれかに特異的なのかどうか)。そしてアストロサイトとの共培養系ではこの集積に変化が生じるのかどうかを検討する。 一方で,申請書提出時点で計画していたタンパク質パルミトイル化に対する細胞外αシヌクレインの影響について,これまでは培養細胞(SH-SY5Y)でのみ検討していたが,初代培養細胞でも行う。この際,培養細胞に比べて少ない細胞で解析する必要があるので,パルミトイル化の検出方法について最適な方法について,神経に詳しい先生とディスカッションして決定する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定では,神経細胞内のタンパク質パルミトイル化を網羅的に解析するために,外注依頼を行う予定であり,そのための予算を計上していた。1年目の研究結果から,細胞内パルミトイル化が細胞外αシヌクレインにより大きく変化するデータがまだ得られておらず外注を行っていないため,予算の余りが生じた。今後の進捗次第であるが,初代培養神経細胞を用いた網羅的解析を行う場合にはこの予算を使用することになる。また,1年目の研究により神経細胞のシナプスに注目した研究を行う必要も生じてきたた。初代培養実験ではマウスももちろんであるが,株化された神経細胞とは異なる試薬類が必要となるため,この購入のためにも次年度使用額を使わせていただくことになる。
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Research Products
(2 results)