2022 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラ粒子マルチパラメーター計測で展開する細胞内オルガネラ遷移
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22K06217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 郁子 (小山郁子) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (10447948)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オルガネラ / 粒子解析 / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
エンドソームは多様に遷移するオルガネラであり、その詳細分類や遷移過程については多くの報告があるが、未だ統一の見解がない。細胞内に取り込まれた積み荷の、エンドソームを介した多経路への仕分け機構についても、特に哺乳類細胞においては未解決である。その理由は、典型的なオルガネラ研究手法に限界があり、エンドソームの多様なコンパートメントを抽出したり、全貌を定量的に解析したりすることが困難であるからと考えられる。混沌としたエンドソーム分類および多経路の全貌を明らかにする突破口を築くためには、新たなオルガネラ研究手法を導入が求められる。そこで、開発中のオルガネラ粒子マルチパラメーター解析法を応用し、多種のエンドソームマーカーを一度に用いてエンドソーム関連オルガネラ群を定量的に解析することを、本研究の目的としている。今年度は以下に述べるように、主に材料作製や測定条件検討などを行った。 1.複数エンドソームマーカーの同時発現細胞を作製した。蛍光タンパク質やHalo-tag, SNAP-tag を融合したエンドソームマーカー RAB5, RAB11, RAB7, CD63の同時安定発現細胞を作製した。 2.粒子検出に適したエンドソーム蛍光プローブの検討を行った。リソソームマーカーLAMP1に対する抗体を蛍光ラベルしたものや、エンドサイトーシスの積荷である上皮成長因子、トランスフェリンの蛍光標識試薬(市販)を試験し、エンドソーム関連オルガネラ粒子として検出可能な蛍光プローブを選定した。 3.マルチカラー蛍光測定の条件検討を行った。共焦点顕微鏡を用いた蛍光スペクトルイメージングを行い、蛍光色素の種類や励起・検出条件の組み合わせを検討し、蛍光オルガネラ粒子をマルチカラーで同時測定の条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多色でエンドサイトーシスを一度に検出するための材料作製、蛍光試薬選定、マルチカラー測定条件をおおむね終えることができた。さらに、試験的にマルチカラー画像から粒子情報を取得し、多変量解析する試みも始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.マルチパラメータデータの可視化とクラスタリングを行う。UMAP法を用いてマルチパラメータデータを次元削減して2次元に可視化し、そのプロファイルを用いてクラスター解析を行う。多変量解析には研究協力者の協力を得る。これまで明確に定義されていないエンドソームクラスターが検出されるかを精査する。 2.エンドサイトーシス積み荷因子の遷移可視化を行う。エンドソーム多色標識細胞を用い、蛍光標識した上皮成長因子やトランスフェリンなどの積み荷因子をエンドサイトーシスで細胞内にとりこませ、時間経過毎の細胞破砕液からエンドソーム1粒子情報を取得する。積み荷因子の分布の時間遷移を、エンドソーム関連オルガネラマップ上に当てはめる。さらに、トラジェクトリー解析によって系譜図を作製し、積み荷の遷移過程の全容を可視化する。選別分岐点の同定や、未定義のコンパートメントの発見を視野に入れ、初期エンドソームからリサイクル経路、あるいは後期エンドソーム成熟への分岐点などを精査する。 3.新規エンドソームサブセットの同定を行う。エンドソームマップのクラスター解析から新規エンドソームクラスターが検出されれば、セルソーターを用いてそれらを採取する。プロテオミクスおよびリピドミクス解析を研究協力者の協力を得ておこない、新規エンドソームクラスターの構成因子を決定する。さらに、生細胞蛍光イメージング法などによって、新規エンドソームの局在や遷移の素過程を調べる。
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Causes of Carryover |
マルチカラー計測に使用するための蛍光試薬の最適選定を進めた結果、複数種類の変更が必要なことがわかり、改めて発注しようとしたがそれらの納期が年度内に間に合わなかったため。次年度にマルチカラー計測に最適な複数の蛍光試薬を購入する計画である。
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