2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K06222
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 宏明 京都大学, 医学研究科, 助教 (90738006)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 鉄 / フェロトーシス / セレン |
Outline of Annual Research Achievements |
フェロトーシスは鉄による脂質過酸化によって惹起される鉄依存性の細胞死である。しかし、「フェロ=鉄」という名称に相反して、鉄の側面からフェロトーシスの解析は行われてこなかった。そこで、鉄の側面からフェロトーシスを再解析するために、鉄添加のみでフェロトーシスを誘導できる新たな系を構築し、その系を用いて全遺伝子を対象としたCRISPRスクリーニングを行なった。その結果、鉄や脂質、セレンなどの多種多様な制御因子の同定に成功した。中でも細胞死促進因子の解析から、鉄取り込みに関与するタンパク質を同定すると共に、新たな鉄代謝制御因子を同定し、解析中である。上記に加え、フェロトーシスの抑制因子にセレンタンパク質合成系が全て含まれていることに着目し解析を行なった。セレンタンパク質は活性中心に21番目のアミノ酸であるセレノシステインを含有するタンパク質群である。本スクリーニング結果より、新たなセレンタンパク質合成因子としてPRDX6を同定した。PRDX6欠損細胞ではGPX4を含むセレンタンパク質の発現が著減し、鉄添加のみで細胞死が誘導された。PRDX6は以前から抗酸化酵素として知られ、GPX活性により酸化物の除去に関与すると考えられていたが、精製タンパク質を用いてPRDX6にGPX活性はないことを見出した。またPRDX6によるセレンタンパク質合成促進メカニズムを解析し、PRDX6はセレンと結合し、セレンの輸送体として働くことで、セレンタンパク質の原材料となるセレンの利用効率を増加させていることを見出した。またPRDX6とがんとの関連を調べ、がん細胞ではPRDX6の発現が増加し、PRDX6発現の高いがん患者では予後が悪いことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなセレンタンパク質合成因子の同定と解析を行い、論文化を行なった。また新たな鉄代謝制御因子と考えられる因子を既に見出しており、現在解析中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
欠損することでセレンタンパク質GPX4の発現が著減する因子を他にも見出しているので、それらの解析を行う。また鉄代謝に関与する新規因子については、同定した因子が鉄取り込みに関与するかなど詳細なメカニズム解析を行う。
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Causes of Carryover |
論文執筆のため、多くの時間を割いたため、次年度使用額が生じた。本年度は同定した鉄代謝制御因子の解析、セレン合成因子の解析のために使用する。
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