2022 Fiscal Year Research-status Report
軟骨細胞の時空間的な極性形成を規定する分子基盤の解明
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22K06226
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菊池 浩二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (70457290)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Map7d1 / 軟骨細胞 / 細胞極性 / 軟骨細胞特異的ノックアウト / ゲノム編集 / GFPノックインマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
私共は、培養細胞/ショウジョウバエを用いた研究により、極性化シグナルと細胞骨格の動態制御をリンクさせる新たな役者として微小管-Wnt/PCPネットワークを発見した(EMBO Rep., 2018; Life Sci. Alliance, 2022.)。その知見からマウスを用いた解析を開始し、その制御分子のひとつである微小管結合タンパク質:Map7とそのパラログ:Map7D1がいくつかの細胞種の極性化に関与する可能性を見出しており、その詳細な分子メカニズムを明らかにすべく、研究を進めている。 本研究では、元自治医大・鈴木博士らが作製した、C末端側を欠失したMap7D1を発現するMap7d1変異マウスの解析から端を発し、Map7D1が内軟骨性骨化に関与する可能性を見出した。また、Map7d1-egfpノックインマウスを用いた解析により、Map7D1の発現が前肥大化軟骨細胞層でピークに達し、細胞内局在のパターンが変化する事を見出した。上記の知見から、Map7D1が軟骨細胞の極性化を制御して内軟骨性骨化に関与すると想定し、他の組織との連関を排除して軟骨細胞の極性化に特化して解析すべく、軟骨細胞特異的にノックアウト(KO)が可能となるCol11a2-CreER; Map7d1 floxマウスを樹立した。上記のマウス作製に先立ち、Map7d1 floxマウスと卵子特異的なCre発現マウスとの交配によって、Map7d1 floxアレルが設計通りに作動する事を確認し、それに付随してMap7d1 KOアレルの単離に成功した。私共は、Map7d1 KOマウスがMap7d1変異マウスよりも重篤な表現型を示す可能性を見出しており、現在、軟骨細胞特異的KOによる解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における表現型解析の鍵となるマウス系統であり、軟骨細胞特異的KOが可能であるCol11a2-CreER; Map7d1 floxマウスの樹立が完了した。事前にMap7d1 floxマウスと卵子特異的なCre発現マウスとの交配によって、Map7d1 floxアレルが設計通りに作動する事を確認している。腹腔内注射によるタモキシフェン投与によりKOを誘導して、表現型解析を進める予定である。 また、並行して進行しているMap7 KO、及び、Map7-egfpマウスの解析から、Map7がセルトリ細胞の極性化を制御する事を見出している。特に、生後最初の同調した精子形成時おいて解析を行った結果、Map7がセルトリ細胞の基底膜側への移動/配置や内腔側で生じる細胞骨格のリモデリングに必須であり、こうしたセルトリ細胞の配置/形態変化が雄性生殖細胞のパキテン期の正確な進行に必要である事を見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策を以下に列記する。 ① 樹立したCol11a2-CreER; Map7d1 floxマウスを用いて、軟骨細胞のカラム形成、軟骨細胞の形態変化、細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを解析する。② Life Sci. Allianceで公表した研究成果の過程で、Map7D1がニューロンの細胞極性形成に関与する可能性を見出している。そこで、Map7d1 KOによる大脳皮質ニューロンの形態への影響を評価するために、Rosa26-CAG-LSL-tdTomato-WPRE; Map7d1 floxマウスを樹立した。Creリコンビナーゼ発現ベクターを子宮内電気穿孔法により導入してモザイクにMap7d1をKOし、大脳皮質ニューロンの形態を解析する。また、細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを解析する。③ Map7 KOマウスを用いて、セルトリ細胞における細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを生後最初の同調した精子形成時おいて解析する。また、Map7 KOにより生じるセルトリ細胞の微細構造の変化を3次元的に明らかにするために、アレイトモグラフィー法、もしくは、FIB-SEM法により解析を行う。④ マウス胎仔におけるMap7とMap7D1のタンパク質レベルでの発現パターンを比較するために、Map7-egfp、及び、Map7d1-egfpノックインマウス由来のマウス胚を固定・透明化し、GFP蛍光観察によって解析する。
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Research Products
(12 results)