2022 Fiscal Year Research-status Report
鞭毛の同期振動を生み出すダイニンのフォースセンサーとしての性質
Project/Area Number |
22K06231
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
古田 茜 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 研究員 (10772337)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 分子モーター / 軸糸ダイニン / 細胞質ダイニン / キネシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体分子モーターが多数集まって協調・同期し、全体として大きな運動が生み出されるメカニズムを明らかにすることを目的としている。このため、鞭毛軸糸の波打ち運動をモデルとし、軸糸ダイニンを用いた実験系の構築を進めてきた。ところが軸糸ダイニンのリコンビナント発現系を利用した大量精製や変異体作製を進めていたところ、当初想定していたよりも難しく、現状では実験に必要な高濃度で均一な材料を得ることに成功していない。そこで、ひとまず軸糸ダイニンの代わりに細胞質ダイニンを用いて、分子モーター間の協調の仕組みを明らかにすることにした。しかし、細胞質ダイニンは軸糸ダイニンに比べて微小管へのaffinityが高く、実際の細胞内においても、多分子より少数分子で働くことが明らかになっており、協調性を調べるのには適していない。そこで、いくつかの変異体を作製し、微小管へのaffinityが低いものを選び実験に用いることにした。協調性を調べる方法として、DNAナノ構造体を利用して数を制御した状態でダイニンを配置し、複合体としての力発生を調べる。さらに、軸糸内では、ダイニンはすべて同じ向きに揃って整列していることにも注目する必要がある。向きを揃えるために、DNAナノ構造体への固定は「一点留め」ではなく「二点で固定」する方法をとる。今年度はダイニンを配置するためのDNAナノ構造体の設計や作製を進め、実際に数を制御してダイニンを並べたものを精製し、微小管との相互作用を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ダイニンを固定するためのDNAナノ構造体はDNA origami tubeを用いる。DNA origami tubeは6 helix からなるbundle (tube状)構造をとり、400 nmの長さを持つ。400 nm上の所望の位置にダイニン固定用のタグを露出させることで、任意の数のダイニンを並べることができる。ダイニンの固定にはSNAPtagとbenzylguanine(BG)の結合を用いる。ダイニン側にSNAPtagを付加しておき、DNA origami tube上にBGを露出させる。まずはダイニンの数を変えていったときに運動性がどう変わるかを調べようとした。実際にはひとつのDNA origami tube上に14、28、36、72と異なる数のダイニンを結合させ、微小管上の運動を調べてみた。ところが、微小管に結合したまま動かなかったり、結合しても前後に運動するのみで一方向性を示すことはなかった。実際にどのようにダイニンがorigami上に結合しているのかを調べるため、ダイニンとDNA origami tubeの複合体をネガティブステイン染色法で電子顕微鏡観察したところ、アグリゲーションが見られる一方で、設定した数よりも少ないダイニンしか結合していないものも観察された。このために安定した運動が見られなかったものと考えらえる。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA origami tubeとダイニンの結合の様子を電子顕微鏡観察したところ、ダイニンのDNA origami tubeへの結合が不安定であることが分かった。今後はこの結合を安定させる方法を検討するとともに、他の固定法や他の種類のDNAナノ構造体の利用も視野に入れていきたい。
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Causes of Carryover |
当初は軸糸ダイニンを用いた実験系を開発する予定であったが、想定していたよりもむずかしかったため、細胞質ダイニンを用いる実験に変更した。細胞質ダイニンの発現系はすでに研究室で使われていたため、新たに購入する試薬の必要がなく、未使用金が生じてしまった。しかし、現在タンパク精製条件の検討段階にあり、様々な精製試薬を試す必要がある。次年度はこれらの購入に使用する予定である。
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