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2022 Fiscal Year Research-status Report

魚類正中ヒレの進化発生学で新規器官獲得の機構を紐解く

Research Project

Project/Area Number 22K06232
Research InstitutionTottori University

Principal Investigator

阿部 玄武  鳥取大学, 医学部, 准教授 (20550073)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2026-03-31
Keywordsヒレ発生 / Twin-tail形態 / 四肢発生 / 新奇形質 / 進化発生学
Outline of Annual Research Achievements

新たな器官構造の獲得は、大規模な形態進化として古くから興味を持たれる進化発生学の大テーマである。しかしこれまでは系統的に遠い動物で起こった現象で限られた範囲の比較を示す研究が多く、具体的な進化発生メカニズムの理解には至っていない。そこで本研究では、真骨魚の正中線で起こった有対化尾ヒレや第一背ヒレなど、新たなヒレ構造(付加的ヒレ構造)を獲得する形態進化に着目する。
硬骨魚の各正中ヒレは、仔魚期にみられる正中膜ヒレ(MFF: Median Fin Fold)の退縮過程で現れてくる。特に正中ヒレ原基(ヒレ芽)は、退縮前のMFFの中に、prdm16発現として可視化される。令和4年度には、主にMFFに異常が起こる変異体dflにおける正中ヒレ芽の解析と、twin-tailゼブラの有対化尾ヒレの解析を行った。まず、dfl変異体に関しては、背ヒレ発生におけるprdm16-TG発現細胞の動態と形成される骨格の観察を行った。その結果、dfl変異体で異常になったMFFの中でも、野生型と変わらない時期からprdm16-TG発現細胞が確認された。またdfl変異体は、正常に近い背ヒレを形成した。したがって、ヒレ芽間葉系細胞はMFFの初期機能とは独立に誘導されることが明らかになった。
一方、有対化尾ヒレを使ったヒレ発生ユニットの解析に関しては、有対化する尾ヒレで筋骨格系がどのように変化するのかを解析した。正常な尾ヒレは、ヒレ骨格の左右に筋肉が入る。しかし有対尾ヒレは、それらの左右の筋肉に相同な外側の筋肉だけでなく、有対化した尾ヒレ骨格の間に異所的な筋肉が確認された。この異所的な筋肉の由来を調べるために、現在発生を遡って異所的な組織構造がどのように存在するのかを観察している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究代表者の所属異動に伴い水槽システムの立ち上げなどで時間を取られる場面もあったものの、当初の計画通りdfl変異体におけるヒレ芽細胞の動態やTwin-tailゼブラの有対化尾ヒレにおける筋発生の解析を行うことができた。またその解析から、正中ヒレを形作るためにユニット化した発生過程と、その発生メカニズムの解明の端緒となる結果を得ている。また、MFF退縮とprdm16-TG発現細胞の解析から、これまで広く信じられてきたMFFの役割と異なる実験結果がえられ、その結果をもとに正中ヒレ発生・進化の新たな仮説の提唱を行った論文を報告している。したがって、一定以上の成果が得られていると判断している。

Strategy for Future Research Activity

まず、dfl変異体の正中ヒレ芽に関しては、ヒレ芽間葉系細胞はMFFの初期機能とは独立に誘導されることが明らかになった。今後は、MFFが発生中期以降に間葉系細胞に機能を持つのか、もつとしたらどのような相互作用があるのかを明らかにしていく予定である。そのための機能解析として、まずMFF細胞やヒレ芽細胞に、時期組織特異的にNTR/MTZシステムを用いた細胞除去実験を行い、それぞれの組織の相互作用の有無を明らかにする。さらにFGF、BMP、Wntなどのシグナルカスケードに関して、阻害剤の添加による機能抑制実験、hspを用いた遺伝子過剰発現による機能獲得実験を行う。
一方、有対化尾ヒレを使ったヒレ発生ユニットの解析に関しては、有対化した尾ヒレ骨格の間に異所的な筋肉が確認された。この異所的な筋肉の由来を調べるために、現在発生を遡って異所的な組織構造がどのように存在するのかを観察している。現在までに、発生初期で尾端部に、左右の間に異所的な筋組織がみれる個体を見出している。それらの組織に関して、細胞追跡実験を行い、どのような組織から異所的な筋肉として発達するかを実験する予定である。現在細胞の追跡には、蛍光色素による細胞染色や、Cre/LoxPシステムを用いた遺伝学的細胞染色法などを試している。

Causes of Carryover

研究代表者の所属異動に際し、予定していた実験項目の一部を次年度に変更した。そのために物品費の一部を使用しなかったため。

  • Research Products

    (5 results)

All 2022 Other

All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results) Presentation (1 results) Remarks (1 results)

  • [Int'l Joint Research] ICOB, Academia Sinica, Taiwan(その他の国・地域)

    • Country Name
      その他の国・地域
    • Counterpart Institution
      ICOB, Academia Sinica, Taiwan
  • [Journal Article] Developmental independence of median fins from the larval fin fold revises their evolutionary origin2022

    • Author(s)
      Miyamoto Kazuhide、Kawakami Koichi、Tamura Koji、Abe Gembu
    • Journal Title

      Scientific Reports

      Volume: 12 Pages: 7521

    • DOI

      10.1038/s41598-022-11180-1

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] Morphological evolution and diversity of pectoral fin skeletons in teleosts2022

    • Author(s)
      Tanaka Yoshitaka、Miura Hiroki、Tamura Koji、Abe Gembu
    • Journal Title

      Zoological Letters

      Volume: 8 Pages: 13

    • DOI

      10.1186/s40851-022-00198-y

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 細胞動態の記載から考える真骨魚類の新たな正中ヒレ形成モデル2022

    • Author(s)
      宮本知英, 川上浩一, 田村宏治, 阿部玄武
    • Organizer
      日本動物学会第93回早稲田大会
  • [Remarks] 魚類ヒレの進化的起源に関する150年来の定説を覆す

    • URL

      https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/05/press20220518-01-fin.html

URL: 

Published: 2023-12-25  

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