2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of neural stem cell (NSC) niche signaling pathways using NSC self-renewal-inducing polymer
Project/Area Number |
22K06234
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田賀 哲也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (40192629)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 自己複製 / ニッチ / ポリマー / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経幹細胞の自己複製能は、神経幹細胞が枯渇しないで神経系の発生と恒常性維持を担う上で不可欠な特性であり、主として細胞外微小環境(ニッチ)によりトリガーされるシグナルで制御されている。神経幹細胞ニッチは様々な要素が関わる複雑性のために、神経幹細胞ニッチシグナルの全容解明には至っていない。本研究は研究代表者らが合成ポリマーアレイを用いて独自に探索して得た、神経幹細胞の自己複製を誘導するニッチ擬態ポリマーPA518を用いて、その全容を解明することを目的に遂行されている。2022年度はこの目的のため、PA518または対照となるPA531のそれぞれのポリマーを、従来の系より規模を拡大してガラスプレート上で合成し、胎生14.5日目のマウスから調整しFGF2添加培養で純度を上げた神経幹細胞をその上で培養する系を用いて、FGF2非添加培養に切り替えた後の神経幹細胞からRNAを抽出して網羅的な遺伝子発現比較解析を行うこととして研究を開始した。開始直後にこの系においてポリマーガラスプレートに神経幹細胞がほとんど接着せず培養の継続が困難になるという予期しない事態が発生した。そこで、PA518および対象となるPA531に加えてPA417の3種類のポリマーについて、それぞれのモノマーブレンドの溶剤における割合を変化させてガラスプレート上で重合させ、神経幹細胞の接着性が良好な条件を見出す実験を行った。その結果、従来の実験系から規模を拡大した系においても、神経幹細胞を良好に接着させて培養を継続する系を得ることができた。この系で、神経幹細胞をFGF2添加培養24時間後にFGF2を除去して72時間培養し、神経幹細胞マーカーnestinに対する抗体で蛍光免疫染色を行い、PA518がnestinの発現を高く維持させるという結果を得た。2022年度は予期しない事態に遭遇したものの次年度につながる良好な系を確立できたことから、多少の遅延はあるものの当初の目的を達成できる見通しとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、PA518または対照となるPA531のそれぞれのポリマーを、従来の系より規模を拡大してガラスプレート上で合成し、胎生14.5日目のマウスから調整しFGF2添加培養で純度を上げた神経幹細胞をその上で培養する系を用いて、FGF2非添加培養に切り替えた後の神経幹細胞からRNAを抽出して網羅的な遺伝子発現比較解析を行うこととして研究を開始したものの、開始直後において、この系ではポリマーガラスプレートに神経幹細胞がほとんど接着せず培養の継続が困難になるという予期しない事態が発生した。そこで、PA518および対象となるPA531に加えてPA417の3種類のポリマーについて、それぞれのモノマーブレンドの溶剤における割合を変化させてガラスプレート上で重合させ、神経幹細胞の接着性が良好な条件を見出す実験を行った。さらに作製した各ポリマーガラスプレートに対する適切な洗浄条件等の検討も加えた結果、従来の実験系から規模を拡大した系においても、神経幹細胞を良好に接着させて培養を継続する系を得ることができた。またこの系で、神経幹細胞をFGF2添加培養24時間後にFGF2を除去して72時間培養し、神経幹細胞マーカーnestinに対する抗体で蛍光免疫染色を行い、PA518がnestinの発現を高く維持させるという結果を得た。2022年度は予期しない事態に遭遇したことに起因して、研究進捗状況はやや遅れているという自己評価となったものの、次年度以降の研究遂行につながる良好な系を確立できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究開始直後において、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析のために規模を拡大したポリマーガラスプレートの系において神経幹細胞がほとんど接着せず培養の継続が困難になるという予期しない事態が発生したことにより、当初研究計画から半年程度の遅れが生じているが、そのような問題点を年度内に解決することができたため、全体的な計画は変更せずに研究を推進することとした。具体的には、規模を拡大して作成したPA518ポリマーおよび対照となるPA531ポリマーガラスプレート上で神経幹細胞を培養する系で、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析を予定通り行うこととした。具体的には、前者は、PA518または対照となるPA531のそれぞれのポリマーをガラスプレート上で合成し、胎生14.5日目のマウスから調整しFGF2添加培養で純度を上げた神経幹細胞をその上で培養する系を用いて、FGF2非添加培養に切り替えた後の神経幹細胞からRNAを抽出して網羅的な遺伝子発現比較解析を行う。後者については、PA518ポリマーと対照ポリマーをそれぞれコートした培養皿上で神経幹細胞を培養した後に細胞を除去してそれぞれのポリマーに結合した蛋白質を回収する。その後電気泳動とゲル染色をしてPA518ポリマーに特異的に結合したバンドを確認し、それらを切り出して、質量分析により蛋白質の同定を行う。これらマルチオミクスによるノンバイアス解析より得られたデータを統合し、神経幹細胞維持に寄与する新規ニッチシグナル伝達の候補経路を絞り込む。また、2022年度には、モノマーブレンドの溶媒における割合を変えることで神経幹細胞の接着性が変化することを副次的に見出すことができたことから、今後、PA518の合成条件(モノマーの合成比率や重合時間など)の検討を重ね、PA518の神経幹細胞ニッチとしての効率をさらに向上させる取組を行うことも可能となった。
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Causes of Carryover |
2022年度の研究開始直後において、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析のために規模を拡大したポリマーガラスプレートの系において神経幹細胞がほとんど接着せず培養の継続が困難になるという予期しない事態が発生したことにより、当初研究計画からやや遅れたことが理由である。そのような問題点を年度内に解決することができたため、今後のトランスクリプトーム解析やプロテオーム解析のために使用される。
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Research Products
(10 results)