2022 Fiscal Year Research-status Report
感覚運動統合を制御する大脳皮質-高次視床核路の分子発生機構
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22K06242
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
林 周一 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50568938)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海馬 / シナプス終末 / 小胞放出 / SBF-SEM |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬における神経回路のシナプス形成の分子制御機構を明らかにするために、まず、子宮内電気穿孔法を用いて海馬のCA3領域に蛍光タンパク質を導入し、シナプス終末の形態を解析した。その結果、軸索で小胞放出を抑制したマウスでは、シナプス前終末と後終末の形態形成が阻害されることが分かった。このことは、シナプス前終末からの小胞放出がシナプス後終末の形態形成にも重要であることを示唆する。次に、蛍光顕微鏡で観察された形態異常の詳細を明らかにするために、Serial Block-Face Scanning Electron Microscopy (SBF-SEM)を用いて、シナプス終末の3次元微細形態解析を行った。材料は上記と同様に、シナプス前終末からの小胞放出を抑制し、同時にその軸索を蛍光タンパク質で標識されるように遺伝子改変したマウスを用いた。成獣のホモ接合型と同腹のヘテロ接合型の各2匹を灌流固定し、取り出した脳をスライスした。その後、申請者がスイスのGraham Knott博士らと開発した光-電子顕微鏡相関法(MacLachlan et al., 2018)による観察を行った。まず、光学顕微鏡を用いて目印となる血管や細胞を撮影した。さらに、蛍光標識されたシナプス前終末の共焦点顕微鏡像を取得した。その後、生理学研究所において、スライスを電子顕微鏡観察用に染色し、樹脂包埋を行った。SBF-SEM観察では、血管や細胞体の位置を目印にして、事前に取得した蛍光顕微鏡像の領域を探し、30 nmごとの連続電子顕微鏡画像を取得した。その結果、小胞放出を抑制したマウスでは、シナプス終末形態が異常になることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って、SBF-SEMを用いたシナプス終末の3次元微細形態解析を行った。申請者がスイスのGraham Knott博士らと開発した光-電子顕微鏡相関法(CLEM)が海馬の神経回路の解析にも適用できることが分かった。この手法を用いて、これまでに2組のマウスの標本観察を行い、順調にデータを取得することができた。現在、そのデータのセグメンテーションや3次元モデルの解析を進めている。さらに、胎生期から新生児期のマウスに対して、電気穿孔法を用いて海馬の領域ごとに蛍光タンパク質を発現できるようになった。この手法とゲノム編集を組み合わせることによって、海馬のシナプス終末形成を制御する遺伝子を同定できることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きSBF-SEMデータの解析を行う。また、その解析結果を発表するために、論文作成を進める。また、電気穿孔法とゲノム編集を組み合わせて、海馬のニューロンの遺伝子操作を行う。シナプス終末形成に関わることが予想される遺伝子を中心に欠損させることにより、海馬の複雑なシナプス終末形成の分子制御を明らかにする。さらに現在、生後のマウスから海馬を取り出し、スライス培養をする系の確立を試みている。先行研究で報告されているように、海馬スライスを膜上に配置し、培養液と気層の間で培養する方法を用いる。培養条件の最適化を行い、特定の遺伝子を欠損した際のシナプス終末の形成の異常の有無を検討する。さらに、将来的にシナプス終末形成過程のライブイメージングや電気生理学的な実験ができる系の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していたエレクトロポレータの購入を延期し、翌年度の助成金と合算して購入することに計画を変更したため。
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