2023 Fiscal Year Research-status Report
感覚運動統合を制御する大脳皮質-高次視床核路の分子発生機構
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22K06242
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
林 周一 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50568938)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海馬 / 小胞放出 / SBF-SEM |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、大脳皮質5層‐視床路のシナプス終末と同様の形態をとる海馬内の神経回路をシナプス発生のモデルとして解析した。海馬は記憶の形成や空間学習に重要であり、歯状回からアンモン角(Cornu Ammonis)CA3領域への投射軸索(苔状線維)は、海馬内の主要回路を構成する。苔状線維は、大脳皮質5層‐視床路と同様の巨大シナプス終末により強力な出力を行う。このシナプス形成機構を明らかにすることは、大脳皮質5層‐視床路とのシナプス発生の共通分子制御を知るだけでなく、海馬の機能の分子基盤を知る上でも重要である。 歯状回の顆粒細胞に特異的にSynaptosomal-Associated Protein 25 (SNAP25)遺伝子を欠損させてシナプス小胞放出を阻害し、同時に細胞を蛍光タンパク質tdTomatoで標識したマウスを用いた。まず、子宮内電気穿孔法を用いてCA3領域の錐体細胞を標識した。その結果、Snap25条件欠損マウスでは、CA3錐体細胞の樹状突起から苔状線維のシナプス前終末に伸びる棘状瘤の形成が阻害されることが分かった。次に、3次元電子顕微鏡Serial block-face scanning electron microscopy (SBF-SEM)と共焦点顕微鏡を組み合わせた光電子相関顕微鏡法を用いて、CA3領域における苔状線維のシナプス終末について解析した。蛍光顕微鏡観察で予想されたように、Snap25条件欠損マウスでは棘状瘤形成が阻害された。特に、この樹状突起の表現型はSnap25を欠損した軸索に対してのみ生じることから、シナプス前終末からの入力がシナプス後終末側の形態形成に必要であることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SBF-SEMを用いた3次元形態解析については計画通りに進み、遺伝子欠損マウスの表現型が明らかになった。一方、子宮内電気穿孔法によるゲノム編集を用いた関連遺伝子の欠損の効果については、さらなる検証が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
SBF-SEMで取得したデータについて、さらに形態解析を進める。また、シナプス小胞放出によって働く可能性のある神経栄養因子を中心に、ゲノム編集を用いて欠損させる。それらの表現型を解析することにより、海馬のシナプス終末形成の分子制御機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
SBF-SEMのデータ解析に多くの時間を要したために、実験試薬や抗体の購入費用が予定よりも少なかった。残額は次年度予算額と合算し、子宮内電気穿孔法を用いた実験などの試薬の購入費用に使用する予定である。
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