2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K06243
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
日下部 りえ 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (70373298)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 頸部 / 骨格筋 / 発生 / 脊椎動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の「首」(頸部)は、頭部と体幹をつなぐ位置にあり、頭部を支えつつ体幹の多彩な運動を可能にしている。首の筋肉や骨格は、それぞれ複数の胚組織に由来し、一部は頭部と体幹部の派生物が複雑に混ざり合って分化する。本研究では、筋肉や腱の前駆細胞がどのような制御を受けて骨格や運動神経との連携をつくるかという問題に焦点を当てている。令和5年度は、所属研究機関を異動し新しい研究室を立ち上げ、主にメダカOryzias latipesやサンマCololabis sairaなどのダツ目真骨魚類を用いた解析を行った。メダカについては腱前駆細胞に発現する遺伝子のプローブを用いて、鰓下筋や頭部周辺の発現部位を解剖学的に観察した。また、移動性筋芽細胞の挙動を制御する遺伝子候補を単離し発現パターンを調べたところ、骨格筋だけでなく脳の特定の領域に発現しており、この細胞について脳の領域マーカーを用いた解析を進めている。新研究室では筋肉の部位特異的な疾患も視野に入れ、肢体型筋ジストロフィーの原因遺伝子についても解析を開始しており、いくつかの原因遺伝子について発現パターンを解析を行い、ゲノム編集による疾患モデルの作成に着手した。 サンマについては国立遺伝学研究所との共同研究により整備されたゲノムデータベースを活用し、移動性筋芽細胞の挙動に関わる遺伝子cDNAを単離し、発現パターンの解析を行った。現在この魚種の発生学的特性や、水産資源としての位置付けも視野に入れた研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には新研究室に加入した人員と共に実験を進め、新たな遺伝子の探索や遺伝子発現パターンの解析を効率的に進めることができた。また国立遺伝学研究所との共同研究を開始し、更新されたゲノムデータベースを活用できるようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
胚発生期から成魚期に渡って体が透明で、ゲノム編集技術の応用が可能なメダカを主な材料とし、長距離移動する体節筋での機能が知られている遺伝子、腱の形成に必須な遺伝子、また軟骨分化に必須な遺伝子の発現パターンを詳細に調べる。また魚類の運動機能全般を視野に入れ、遺伝性疾患モデルを作り出せる遺伝子の候補を探索し、その機能欠失の影響の解析も目指す。
|
Causes of Carryover |
令和5年度に使用した試薬類などは、他研究費による購入分などで大半をカバーすることができた。また顕微鏡・追加の飼育設備・純水作製装置などの大型機器は、現状の実験室が仮設のため、購入を延期した。 令和6年度には研究室は2年目を迎え、スペースは拡張予定であるものの、研究課題に必要な物品が不足しているため、機器および消耗品(試薬、プラスチック器具)の調達を行う。
|