2022 Fiscal Year Research-status Report
MafB遺伝子を糸口とした心臓神経堤細胞の心臓における役割と分化機構の解明
Project/Area Number |
22K06251
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松花 沙織 神戸大学, 理学研究科, 助教 (70767251)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 心臓神経堤細胞 / MafB / ニワトリ / 細胞分化 / 遺伝子発現制御機構 / 心臓形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経堤細胞は脊椎動物の初期発生時に生じる、多分化能と移動能を合わせ持つ細胞群である。心臓神経堤細胞は神経堤細胞の中で唯一心臓中隔へ分化できる細胞であり、この分化能は心臓神経堤細胞に特有である。 私たちは先行研究において、心臓神経堤細胞の形成初期から特異的に発現するMafB遺伝子が、ニワトリ胚の心臓神経堤細胞形成に必須であることを明らかにした。また、MafB遺伝子の心臓神経堤細胞特異的な発現活性を有する発現調節領域(MafB_E1)を同定した。 本研究では、心臓神経堤細胞の心臓における役割を明らかにするとともに、心臓神経堤細胞がもつ独自の分化機構を明らかにすることを目的とする。 本年度はMafBが心臓神経堤細胞の独自性を生み出しているのではないかという仮説を検証した。具体的には、心臓神経堤細胞特異的遺伝子MafBあるいはMafBと他の神経堤遺伝子を組み合わせた遺伝子群を体幹部神経堤で異所発現させたニワトリ胚を作成し、その胚に対してレポーター遺伝子の発現活性及び内在遺伝子の発現様式を解析した。レポーターには、心臓神経堤細胞では発現活性を持つが体幹部神経堤細胞では発現活性がない、MafB_E1レポーター及びSox10E2レポーター遺伝子を使用した。内在発現の解析には、心臓神経堤細胞の移動制御因子CXCR4をマーカーに用いた。 その結果、MafBのみを体幹部で異所発現させることにより、MafB_E1レポーターの発現を体幹部神経堤で引き起こせることを明らかにした。また、MafBを他の神経堤遺伝子Ets1とSox8とともに、体幹部神経堤で異所発現させることにより、Sox10E2レポーターの発現活性が見られたことに加え、心臓神経堤細胞の移動制御因子CXCR4の発現を誘導することができた。さらに、このCXCR4発現陽性の体幹部神経堤細胞がSDF1に応答する細胞性質を有していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MafBを含む神経堤遺伝子群を体幹部神経堤で異所発現させることにより、心臓神経堤様のCXCR4遺伝子発現様式を示した。その成果を論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
MafB、Ets1、Sox8の3つの遺伝子群を体幹部神経堤で異所発現させることにより、CXCR4の発現を誘導することができたという結果を受け、MafB, Ets1, Sox8が心臓神経堤細胞の移動性を与える因子群として機能していることが明らかとなった。それにより、これらの3つの遺伝子により体幹部神経堤細胞から心臓神経堤細胞の性質にリプログラムできている可能性が示唆された。今後は他の遺伝子発現についても解析を進めるとともに、この3遺伝子を導入した体幹部神経堤を心臓神経堤とニワトリ胚内で置換移植し、細胞分化能を正常胚を比較することで、リプログラム効果を検証する。これに加え、今後は心臓神経堤細胞の心臓内分布を明らかにするため、MafB_E1レポーターを用いて細胞追跡実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、心臓神経堤細胞の細胞追跡実験から行う予定であったが、MafBの異所発現実験を先行し注力して行った。そのため、細胞追跡実験およびその分化細胞種解析の遂行及び、そのための設備備品の購入を次年度に予定している。
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Research Products
(3 results)