2022 Fiscal Year Research-status Report
酸素発生型光合成を制御する新規プロトン膜透過機構の解明
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22K06276
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
増田 真二 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30373369)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 葉緑体 / シロイヌナズナ / 光合成 / チラコイド膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで筆者らが同定した、葉緑体包膜に局在しプロトンの膜透過を光依存的に行うDLDG1とYcf10、さらに葉緑体の包膜とチラコイド膜の両方に局在するFLAP1の遺伝学的・生化学的解析を進めることで、これら新規の因子に依存した新たなプロトン膜移動の存在とその機能を明らかにすることを目指す。今年度の成果を以下にまとめる。 1)FLAP1の相互作用因子の同定:これまでに、プロテインA(ProA)を融合したFLAP1を発現するシロイヌナズナ株の作出に成功している。R4年度は、このラインからIgGカラムを用いて、可溶化したチラコイド膜からProA-FLAP1の精製を行い、これに結合しているタンパク質の同定を行うことを目指した。その結果、ジギトニンにより可溶化したチラコイド膜画分よりProA-FLAP1を精製する系の構築に成功した。 2)dldg1変異体のサプレッサー変異体の単離:dldg1変異体は連続光で育てると若い葉がペールグリーンになる表現型を示す。これまでに、EMS処理を施したdldg1変異体からペールグリーンの表現型が回復したサプレッサー(抑圧)変異体の作出を進め、複数の抑圧変異体の単離に成功している。R4年度は、いくつかの抑圧変異体の原因遺伝子の同定を行った。具体的には、各抑圧変異体の変異箇所をゲノムリシーケンシングのデータをもとに絞り込んだ。 3)シアノバクテリアの解析:DLDG1, Ycf10, FLAP1はシアノバクテリアを含む酸素発生型光合成生物に特異的に保存されている。単細胞生物のシアノバクテリアを用いてこれらのオーソログを解析することで、これら因子のより詳細な生理機能の解明に迫れると考えられる。そこで、シアノバクテリアの各変異体にpH指示タンパク質Luphinを発現させ、光照射に伴う細胞質のpH変化をリアルタイムでモニターできる系の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍もほぼ明け、通常通りに研究を実行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1)FLAP1の相互作用因子の同定:R4年度までに作出したプロテインA(ProA)を融合したFLAP1を発現するシロイヌナズナ株を用いて、可溶化したチラコイド膜画分よりProA-FLAP1を精製する。その後SDS-PAGEにより精製タンパク質を分離し、そこに含まれているタンパク質を質量分析により同定する。 2)dldg1変異体のサプレッサー変異体の単離:サプレッサー変異体のゲノムリシーケンシングのデータをもとに絞り込んだ遺伝子に着目し、そのWT遺伝子をそれぞれの相補体に導入することで、緑が回復した表現型がdldg1のペールグリーンの表現型に戻るかを指標に、サプレッサー変異体の原因遺伝子を確定することを目指す。 3)シアノバクテリアの解析:R4度までに作出したpH指示タンパク質Luphinを発現させた各変異体を用いて、光照射に伴う細胞質のpH変化をリアルタイムでモニターすることで、各遺伝子産物が光照射時の細胞質におけるpH変化に対する影響を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
予定していた実験に必要な組換え体の作出が遅れ、試薬の購入を次年度にする必要があったため。
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