2022 Fiscal Year Research-status Report
シロイヌナズナの応答変異株を用いたサーモスペルミンの作用機構の解明
Project/Area Number |
22K06281
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 卓 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (20271710)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | シロイヌナズナ / ポリアミン / サーモスペルミン / 維菅束分化 / 突然変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
サーモスペルミンは植物と一部の細菌が持つポリアミンの一つで,種子植物では維管束木部分化の抑制に関わる。シロイヌナズナのサーモスペルミン欠損変異およびそのサプレッサー変異を用いた解析から,サーモスペルミンは木部分化の抑制に関わるSAC51ファミリー遺伝子のmRNA翻訳促進に働くことを突き止めたが,分子機構の詳細は明らかでない。そこで外的なサーモスペルミンが木部分化を抑え,成長を阻害する効果を指標にシロイヌナズナのサーモスペルミン非感受性変異株を探索,単離し,それらの原因遺伝子を同定した結果,いずれもRNA修飾に関わる酵素に異常が見つかった。本研究では,これらRNA修飾酵素の機能を手がかりにmRNA翻訳におけるサーモスペルミンの作用機構の解析をすすめるとともに,作用標的であるSAC51ファミリーの機能解析から,サーモスペルミンがmRNA翻訳の促進を介して木部分化を抑える仕組みの解明を目指す。 3年計画の研究として,(a) サーモスペルミン非感受性変異株itsの各原因遺伝子の確定とその機能解析,(b) サーモスペルミンの作用標的であるSAC51ファミリーの個々の遺伝子の発現制御と機能の解析を並行してすすめた。 4つの非感受性変異its1, 3, 7, 11の原因遺伝子は,染色体マッピングとゲノム解析からRNAメチル化酵素,スプライソソーム解離因子,シュードウリジン化酵素,RNA結合タンパクをそれぞれコードしていると予想され,its1はT-DNA挿入変異を入手してサーモスペルミン非感受性を確認した。初年度はits7の推定原因遺伝子PHIP1のゲノム編集による変異株を作出し,サーモスペルミン非感受性が確かめられたことから,its7の原因遺伝子がPHIP1であることを確定した。また,サーモスペルミンの標的SAC51ファミリーの1つであるSACL1遺伝子のゲノム編集株作出にも成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,変異株の原因遺伝子の特定が進んでいる。また,ゲノム編集による欠損変異株の作出も順調に成功しており,多重変異の解析を初めとした研究が進展しつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
サーモスペルミン非感受性変異株の原因遺伝子は特定されつつあるが,実際にどのようにして応答性が失われるのか,サーモスペルミンの作用標的であるSAC51ファミリーの転写や翻訳への影響を詳細に調べる。 また,研究途上で得られたサーモスペルミン過感受性変異との掛け合わせやSAC51ファミリーの変異との掛け合わせを進めて,多重変異の表現型解析を行う。
|
Causes of Carryover |
初年度の使用額が予定を超過し,前倒しを請求した。残額が次年度使用額として生じたため,当初の予定に沿って使用する。
|